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自治体BOSAIまちづくり伝道師。長年にわたり、毎年発刊の『防災+手帳』の作成に関わるなど、災害への備えや命を守る行動、災害に強いまちづくりへの理解も深い。

現在、80代の母親と同居するリアル「オヤノコト」世代。聴こえの衰えや唐突に前後する会話に母親の“年齢”を実感しつつも「まだまだ元気そうだし…」と、趣味に没頭する日々を送りながら、食べるための「歯」・元気で過ごすための「足」の健康維持に奮闘中。
いつ、どこで起こるかわからない自然災害。たとえ大きな地震や余震、大雨のピークが過ぎたとしても、住まいや街、地域に大きな被害が出た場合、元通りの「いつもの暮らし」に戻るまでにはかなりの時間が必要になることも珍しくありません。
離れて暮らす親が、こうした自然災害に巻き込まれ、いつもと異なる生活環境、生活リズムでの暮らしが長引くことになったら――体力的・精神的な負担も大きくなり、持病の悪化、感染症の蔓延、認知機能の低下などの不調が生じる恐れもあります。こうした不調、そして恐ろしい「災害関連死」から親を守るために。知っておきたいこと、今から準備しておくべきことを長く防災に関わる出版物の制作・監修に関わり、災害に強いまちづくりを推進する活動にも力を注いでいるねじまきさんに教えていただきました。
下のグラフは、2016年4月に発生した平成28年熊本地震での死者数とその内訳をまとめたものです(2019年時点)。建物の崩壊や火災などに巻き込まれたことが原因で亡くなった「直接死」の方が50人だったのに対し、その後の避難生活による体調悪化や精神的な負担などの影響が原因で命を落とす「災害関連死」では、実に4倍以上、218名もの方がお亡くなりになっていることがわかります。

また、私たち「オヤノコト」世代にとって不安なのが、災害関連死による犠牲者は「高い確率で70歳以上の高齢者である」という事実。実際、平成28年熊本地震のデータでも災害関連死218名のうち、70歳以上の高齢者が約8割を占めているのです。

「避難所などに身を寄せるなど『いつもとは違う』環境、場所での慣れない生活が長く続くと、少しずつストレスや疲労が蓄積し、持病が悪化する、体力が低下して肺炎や感染症に罹患する恐れもあります。災害から助かって良かった……と安心するのではなく、その後の避難生活をどう生き延びるかも考えておくべきなのです」(ねじまきさん/以下同)

日本は住宅やビルなどの建築物に世界的に見てもかなり厳しい耐震基準が設けられており、地震で建物が崩壊し多くの人が一度に命を落とす……というケースは少なくなっています。しかし長く続く避難生活によって健康被害を受ける人が多いのです。避難生活で体調を崩す、命を落とさないための準備、備えを考えていく必要があるといえるでしょう。
大雨による土砂災害や、大きな地震によって自宅に被害が出た、倒壊の恐れがある、という場合、多くの方がお住まいの区市町村が設ける「避難所」に身を寄せる選択を選択すると思います。でも、もしも親に持病があって定期的に通院・投薬が必要、足腰が弱くて床の上での生活は厳しいかも……という場合、きちんと自分で迅速に避難できるか、避難所での生活に耐えられるかなど、さまざまな不安を感じるものです。

「そんな時は親御さんがお住まいの市区町村で『避難行動要支援者名簿』の登録ができないか、また避難後に『福祉避難所』の利用が可能かどうかを確認しておきましょう。名簿に登録できる条件、福祉避難所の利用の流れなどは区市町村によって異なるため、必ずしも全員が利用できるというわけではありませんが、離れて暮らす親御さんが心配……という方は、一度チェックしておくべきだと思います」
災害時に自力で避難することが難しいと思われる人たちを区市町村で把握し、避難支援や安否確認を行うための名簿。あらかじめこの名簿に登録しておくことで、避難情報の伝達や、個別避難計画などの作成といった支援も受けることができます。ただし登録できる条件はお住まいの区市町村によってかなり異なるので、しっかり確認を。
一般の指定避難所での生活が困難な人(高齢者、障がい者、乳幼児、妊産婦など)を対象に設置される避難所のこと。バリアフリー化された施設や障がい者トイレ、必要な物資や器材が用意されています。一度、指定避難所に避難した後、必要と判断された方が移動する……というケースが多いので開設の流れ、利用方法を把握しておきましょう。
要支援認定、要介護認定は受けていないけれど、ひとりぐらしで避難も避難所での生活も心配がいっぱい……という場合も、災害直後はすぐに現地に駆けつけることも難しいのが現状です。災害後の不安を軽減するためにも、こうした行政支援の利用の検討・確認をしてみてはいかがでしょうか。
災害発生直後は、道路の寸断、人命救助が優先されることから、避難所などへの支援物資が届かない、建物被害によって店舗も営業できないなど「食べ物や生活用品が手に入らない」という状況になる恐れもあります。そのため、避難所に身を寄せる場合も、自宅や車内で避難生活を送る場合も、最低3日分の「備え」をしておくべきだといわれています。

「高齢になると、災害による不安、“いつもと違う”生活が続くことで受けるストレス、精神的・身体的負担もグンと大きくなります。そのため、非常時の備えは『普段どおりの生活を維持する』ためには何が必要かを考え、準備をすることが大切です。親御さんが普段飲んでいる薬、眼鏡や補聴器、入れ歯はもちろん、それらをお手入れ・使用するためのアイテムも揃えるようにしてください」

上のチェックリストは、政府広報オンライン「防災特集」や、内閣府・東京都の防災情報、そして「そなエリア東京」で展示されていた避難生活経験者の声を参考に「オヤノコト」編集部がまとめたもの。これらのアイテムの中でも「特に!」必須で準備しておきたいアイテムについて、ねじまきさんにその理由と共に教えていただきました。
・歯ブラシなどの口腔ケアアイテム

高齢者や持病がある方にとって、口の中をキレイに、清潔な状態を保つことは体力の低下や肺炎のリスクを下げるためにも欠かせないこと。口の中で菌が増殖すると口腔内の炎症を引き起こすほか、菌が肺に入り誤嚥性肺炎を引き起こす要因にもなります。
災害時には、断水がおこり、水を使えない状況が考えられます。水を使ってのうがいができない状況でも、歯や口の中を清潔に保てるケア用品(液体歯磨き、歯磨きシート)を用意しておくことが大切です。
・常用薬

普段、飲んでいる薬があるなら、避難時に必ず一緒に持ち出すようにしましょう。そのためにも、定期的に、薬を切らさないよう親に薬の在庫状況を確認するようにするとよいでしょう。親が飲んでいる薬を知っておくことも大切です。念のためにお薬手帳の保管場所も確認しておきましょう。
災害直後はすぐに医師の診断や処方が受けられない可能性もあります。薬は「もうすぐ切れるからもらいに行く」のではなく、常に2週間分くらい手元に残っている段階で処方してもらうようにすると、災害時に「薬がない!」と焦ることもなくなります。
・眼鏡、補聴器

避難所では重要なお知らせが壁に掲示されたり、放送で一斉告知されるといったことも少なくありません。その際、いつも使っている眼鏡がない、補聴器や集音器がないとなると不便なだけでなく、情報不足で必要な支援が受けられなくなるといった恐れもあります。眼鏡や補聴器(電池も!)はすぐに持ち出せるよう、準備しておくようにしてください。
眼鏡は普段使っているものとは別に予備の眼鏡を用意して、非常時の持出袋に常に入れておくようにする、補聴器は夜寝る際も、枕元で充電するようにして、いざという時にすぐに持ち出せるよう習慣づけておきましょう。
・折りたたみイスなどの補助用品

避難所での生活は、基本「床の上」になります。高齢となり、足腰が弱い、痛めているという場合は立つのも座るのも一苦労。ギリギリまでトイレに行くのを我慢してしまい、体調を崩す要因になってしまう恐れもあります。
また、避難所には非常に椅子が少なく、取り合いになります。今は軽くて持ち運びしやすい折り畳み椅子もありますので、それを持ち出せるようにしておくと、避難所でとても役に立ちます。また杖を使っている人は、忘れずに持っていきましょう。
・マイナンバーカード(マイナ保険証)
今、災害時における避難所のデジタル化を推進し、被災者の安全・快適な避難生活の実現をめざす『避難所DX』の取り組みが、各自治体で進んでいます。「マイナンバーカード(マイナ保険証)」を持参・準備しておくと、以下のような手続きがスムーズにうけることができますので、利用登録を含め準備しておくといざという時に便利です。
避難所の入退所手続き
マイナンバーカードを提示するだけで、受付手続きが簡単になるだけでなく、離れて暮らす親がどこの避難所にいるのか、所在の確認・照会もしやすくなります。
医療情報(通院履歴、服用薬)の確認
マイナ保険証を提示、もしくは登録しておくだけで、災害時、いつも通っている病院・クリニック以外を受診することになった場合も、これまでの通院履歴や持病の有無、服用薬の確認ができますので、診察も処方もスムーズに受けることができます。
被災者支援の手続き
災害後の生活再建に必要な罹災証明書もマイナンバーカードがあれば、マイナポータルからオンラインで発行申請できるので、役所に足を運び、待つことなく申請できます。ただし、マイナポータルでの申請可否は自治体によって対応状況が異なりますので、事前に確認しておくようにしましょう。
・・・いかがでしょうか。
70代、80代と年齢を重ね、年齢を重ねた親にとっては「災害そのもの」だけでなく、「災害が起きた後の生活」も大きな脅威になります。せっかく災害では助かった命を失うことにならないよう日頃から対策をしておくことが大切なのです。
「近年、大きな自然災害が続いていることもあり、親御さんの中でも防災意識が高まっていることと思います。でも実際に自分が何をしたらいいのか、何から準備すればいいのかわからないという方や、防災グッズも何をどこで入手し、揃えればいいのかと迷い、後回しにしている方も多いと思うのです。防災対策は親御さんに任せきりにするのではなく、「オヤノコト」世代主導で進める方が確実ですし、安心だと思います」

先にもお伝えしましたが、親の命を守るための「備え」のポイントは、災害時も「いつもと同じ生活」を維持できるようにすること。そのためには普段、親がどのようなものを食べ、どのような健康状態なのか、そして日々の生活の中で欠かせないものは何かをきちんと把握しておくことが重要になってきます。
ぜひ一度、持ち物リストなども活用しながら、親子でいっしょに確認してみてください。
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