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第11回その後:相談者60代、対象者(母親)80代

老健での生活。認知機能を衰えさせずに自宅に戻したい その後の芹沢さんと母【第3話】

記事の発言・監修・ライター
「オヤノコト」編集部
坂口鈴香

20年ほど前に親を呼び寄せ、母を看取った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて考えるように。施設やそこで暮らす親世代、認知症、高齢の親と子どもの関係、終末期に関するブックレビューなどを執筆

東北地方から母親(88)を呼び寄せて自宅での介護をはじめた芹沢尚美さん(仮名・62)。順調な呼び寄せ生活でしたが、母親が重病になり入院。命の危機を乗り越えたものの、1カ月の入院ですっかり体力と筋力が落ちてしまい要介護5に。自宅復帰を目ざしてリハビリをするため、介護老人保健施設(老健)を探すことになりました。

(第2話はこちら)

外国人介護士は優秀で優しい

芹沢さんは、老健に望むポイントを「自宅に戻れるか」という点に絞りました。

「結局、入所を決めた老健は私服で過ごせて、スマホも持ち込めるところ。外泊も面会も自由です。とはいえ、1回15分という制限はありました。まだ感染症予防のために、多くの老健では面会時間に制限を設けているようでしたので、これは仕方ないと諦めました」

それから、芹沢さんは毎日母親の面会に通っています。最善の選択をしたつもりでしたが、それでも不満に思うことはあると顔を曇らせました。

「やはり施設だと思うことは少なくありません。便がついたまま食事になったり……。自宅なら絶対にそんなことはないのに。どんなにか気持ち悪いだろうと、母がかわいそうでなりません」

外国人の介護士が半数以上なのも、不満だといいます。人手不足だから仕方ないとはいえ、外国人が「パタカラ体操」(口腔機能改善のための体操)をしているのも、「なんだかな」という感じです。

「日本人の職員にそれとなく聞いてみると、『ここにいる外国人介護士は介護福祉士の資格を持っている優秀な人たちなんですよ』と言われました。母も外国人の方が優しいと言っています。確かにいつも笑顔で、入所者にも熱心に接しているようです。偏見だったかなと反省しました」

「生きる気力がない」と言い出した母

この施設なら自宅復帰できるだろうと考えて選んだはずでしたが、入所してしばらく経つと母親が「生きる気力がない」というようになりました。

「これは大変だと思い、ただ面会するだけでなくて、認知機能を落とさないような工夫をすることにしました。母が好きな新聞を活用しようと考えたんです」

母親は毎日新聞を隅々まで読んでいました。特に好きなのが、人生相談のコーナーです。そこで芹沢さんは、人生相談を音読してもらうことにしました。

「そして、その相談に対して、母が回答者なら何と答えるか考えてもらうんです。なかなか難しいですよ。ユーモアたっぷりに回答できる日もあれば、いくら考えても答えが出なくて『お手上げ』という日も。それでも、楽しんで頭を使ってくれればいいと思っています」

相撲や野球も好きなので、ときにはスポーツ新聞を買って持っていきます。さらには熟語ドリルをさせたり、日記を書かせたり、となかなかのスパルタぶりです。「母には、『認知症になったら面会に来ないからね』と冗談っぽく言って、お尻を叩いています」と笑いますが、芹沢さん流の愛のムチなのでしょう。母親が好きな「人生相談」をツールとした生きる希望と認知機能を維持するための“特訓”は、母娘のコミュニケーションの好材料にもなっているようで、読者の皆さんも大いに参考にしてほしいところです。

母親が老健に入って半年以上が過ぎました。母親が再び自宅で暮らせるようになるのが目標ですが、「まだ家に戻す自信はない」と芹沢さんは言います。老健は原則3カ月ごとに判定会議があって、自宅に戻れるか、入所を継続するかを話し合います。「今のところ、もう少しは置いてもらえそうです」。胸をなでおろす一方、今後別の施設に移ることも視野に入れて準備と行動を開始しなければならないと考えています。

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