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第11回:相談者60代、対象者(母親)80代


20年ほど前に親を呼び寄せ、母を看取った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて考えるように。施設やそこで暮らす親世代、認知症、高齢の親と子どもの関係、終末期に関するブックレビューなどを執筆
芹沢尚美さん(仮名・62)は、東北地方で兄と二人で暮らしていた母親の呼び寄せを決心し、「オヤノコト」相談室を訪れました。母親と同居して介護するつもりでしたが、近くにできた有料老人ホームも選択肢として見学しておきたいと思ったのです。
(第1話はこちら)
「オヤノコト」相談室では施設見学の同行も行っています。芹沢さんの場合、見学したい施設が決まっていたので、そのホームに絞って見学することになりました。
いざというときの「逃げ道」と形容した芹沢さんでしたが、いつでも母親に会いにいけるようにはしたいと考えていました。ちょうど自宅から徒歩圏内に新しく開設した老人ホームがあり、母親をお願いするとしたらそこしかないと考えたのです。
「(オヤノコトの)相談員さんに同行してもらって、大変助かりました。在宅介護についてはかなり勉強したし、母も実際に利用していたのである程度理解していたのですが、施設となるとほとんど知識がありません。特養と老健くらいはわかりますが、有料老人ホームとサ高住となるとどう違うのかさっぱりわかりませんでしたから」
ホームの担当者の説明に加えて、「オヤノコト」相談員の解説を受けながら見学すると、見学や施設の見極めポイントがおのずと明らかになったと言います。
「その施設は有料老人ホームだとおおざっぱに理解していましたが、それは『住宅型有料老人ホーム』だということでした。今の母が要介護2なので、住宅型でもそう問題はなさそうでしたが、今後介護度が重くなると介護体制や料金面で問題が生じるかもしれないということも理解できました」
「住宅型有料老人ホーム」は、ホームが提供する介護サービスを24時間利用することができる「介護付き有料老人ホーム」とは違い、生活支援などのサービスはついていますが、介護が必要になると入居者が外部事業所から訪問介護などの介護サービスを受けながら暮らします。そのため、介護度が重くなっても24時間介護サービスを受けられなかったり、料金が高くなったりする可能性があるのです。ただ職員や施設の雰囲気は良く、ここなら母親も快適に暮らせるのではないかとも感じたと言います。
ところが、施設長の話を聞くうちに、「ここは候補にはならない」と決意が固まったのです。
「というのも、このホームは面会が週に1回、10分だけと決まっていたのです。さらに、外泊もできないということでした。それでは、何のために私の近くに呼び寄せるのかわかりません。地元の施設にいるのと変わらないどころか、母にとっては住み慣れた地元にいる方がいいくらいです」
コロナが落ち着いた今も、面会の制限を設けている施設は少なくありません。感染症はコロナだけでなく、入居者の感染症予防を考えると、面会の制限も仕方ない面はあるのでしょう。しかし芹沢さんにとっては、自由な面会は譲れない条件だったのです。
「これで、母を自宅で介護するという腹が決まった気がします。『逃げ道』は、またゆっくり考えようと思います」
芹沢さんは、母親を地元から呼び寄せて在宅介護をする準備に取り掛かりました。最初に行ったのが、夫の承諾を取ることでした。
ちょうどこの頃、夫の両親が相ついで亡くなっていました。両親の初盆が終わったあと、芹沢さんは、夫に「母を引き取りたい」と言い出しました。夫は反対しませんでした。自分の両親の介護に関しては、姉任せだったことに後悔があったのではないかと、芹沢さんは推察しています。「親孝行できるのは親が生きているうちだ」と思ったのかどうか、夫は義理の母と同居することに抵抗を示さなかったことに芹沢さんはホッとしました。夫の同意を得るのはハードルが高いだろうと予想していただけに、母親の呼び寄せは一歩大きく前進したのです。
「母はもし姑が健在だったら、私のところに来るとは言わなかったと思います。昔の人なので、夫の親を差し置いて、嫁いだ娘の世話になるなんて考えられなかったでしょう。姑が先に亡くなってくれたのは、姑からのプレゼントだったと思っています」
(第3話に続きます)
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