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【防災について考える③】“体験したことのない”災害が頻発中! 豪雨&大地震――その時、高齢の親の身に何が起こる?

2016年熊本地震で倒壊した家
記事の発言・監修・ライター
監修者
神取信夫 さん

BCAO認定事業継続管理者、和光市BOSAIまちづくり伝道師。長年にわたり、毎年発刊の『防災+手帳』(新建新聞社刊/関西大学教授 河田惠昭氏監修)の作成に関わり、災害への備えや命を守る行動、災害に強いまちづくりへの理解も深い。

「オヤノコト」編集部 ライター
大野ルミコ(Rumiko Ono)

現在、80代の母親と同居するリアル「オヤノコト」世代。聴こえの衰えや唐突に前後する会話に母親の“年齢”を実感しつつも「まだまだ元気そうだし…」と、趣味に没頭する日々を送りながら、食べるための「歯」・元気で過ごすための「足」の健康維持に奮闘中。

目次

では実際に想定外の豪雨、そして大地震が起きた時には親、そして私達にはどのようなことが起こるのでしょうか。災害体験施設で実際に体感してきました!

近年、頻発する想定外の大雨、そして突然の大地震。2026年も7月の「令和8年熊本地震」、8月の「千葉豪雨」をはじめ、各地でさまざまな災害が発生し、大きな被害をもたらしています。災害弱者となりがちな高齢の親、そして自分たちの命をこうした自然災害から守るために知っておきたいことを、長く防災に関わる出版物の制作・監修に関わり、災害に強いまちづくりを推進する「和光市BOSAIまちづくり伝道師」としても活躍を続ける神取信夫さんに解説いただきながら、ご紹介していきます。

まさに「一歩も進めない」激しい雨……外出も、避難も危険!

今年の夏は、あっという間に道路が冠水しまうような、いわゆる「ゲリラ雷雨」が頻発しているように感じます。実際、数年に一度しか発生しないような猛烈な大雨が観測されたことを知らせる「記録的短時間大雨情報」が、2026年8月だけで実に47回も発表されているのです(8月31日9時現在)。

2026年8月に発表された記録的短時間大雨情報の回数と場所

1時間に50㎜や80㎜、ましてや100㎜の雨……と聞いても「実際にどのくらいの雨なのだろう」とピンとこない人もいると思います。そこで「オヤノコト」編集部スタッフが東京・本所防災館にて「風速30m、1時間に50㎜の雨」を体験してみました。

正直、体にたたきつけるように降ってくる雨が痛くて、顔を上げることもできません

「この風速30m、1時間に50㎜の雨というのは猛烈な風の中、滝のようにゴーゴーと雨が降っている、まさに台風が上陸したときのような状態。正直、傘をさしても何の役にも立たないような状態ですし、水しぶきで周りは真っ白で視界も非常に悪くなりますから、この状態から外出して避難……というのは高齢の親御さんはもちろん、「オヤノコト」世代の方でもかなりの危険が伴うと思います」(神取さん/以下同)

本所防災館暴風雨体験
完全防備での体験でも、
まさに「立っているのがやっと」の状態に!

「1時間に50㎜の雨」は、まさに滝に打たれているような感じで激しく雨が体に打ち付けてくるので、まっすぐ前を見て歩くのも厳しい状態です。雨の勢いが凄すぎて目を開けることもできませんから、あの状態の中で高齢の親がひとりで、もしくは親を連れていっしょに避難する……というのは、正直「無理だな」と感じます。

急な浸水に巻き込まれたら、脱出も難しい状態に

歩いて避難するのが難しいのであれば、車を使えばいいのでは? と考える人もいるかもしれません。でも、先日の千葉豪雨でも車で移動中に冠水した道路で動けなくなり、そのまま車から脱出することもできずに亡くなられた方もいらっしゃいます。都市部はアンダーパスなど大雨で水が溜まりやすい場所が多いですし、地方では冠水によって道路わきの溝などが見えにくくなる恐れもあります。

本所防災館都市型水害体験 自動車脱出シュミレーター
本所防災館都市型水害体験 自動車脱出シュミレーター体験者

また、上の写真のようにドア下20㎝(白く光っている高さ)まで水が来た場合、強い水圧で、女性がかなり力を入れてやっとドアが開くという状態になってしまいます。

「車のドアの部分まで浸水すると、たとえそれが10㎝程度でも水圧で簡単にはドアが開かなくなります。高齢になると筋力も体力も低下しますから、ドアが開かなくなって逃げ遅れるという恐れもあると思います。激しい雨の日は車に乗らない、乗っている時にゲリラ豪雨に見舞われた時は、高台や2階以上の駐車場など安全なところに車を止めて様子を見るといった災害時の行動、対策意識を高めておきましょう」

同様に、急な大雨の時に地下街や地下の駐車場、地下鉄の駅などにいて、水が流れ込んでくるという可能性もあり得ます。その際も例えば非常口のドア部分に水が溜まってしまったら、水圧でドアが開かなくなり、脱出が難しくなるのだとか。

本所防災館都市型水害体験 自動車脱出シュミレーター水圧ドア体験
本所防災館都市型水害体験 自動車脱出シュミレーター水圧ドア体験者

こちらも同様にドア下20㎝(白く光っている部分)まで水が来ると、もう全身で力を入れないとドアは開きません。高齢の親ひとりでは、ドアが開かず、完全に閉じ込められてしまう可能性もあります。

「1時間に80㎜、100㎜を超える雨が降れば、あっという間に道路の冠水、住宅の浸水といった災害が発生する恐れがあります。若い方ならスマホの雨雲レーダーなどを確認して突発的な大雨の予測もできると思いますが、ご高齢の方はそうした情報を得ることができずに行動が遅れてしまうケースも多々見られます。ぜひ「オヤノコト」世代の皆さんが正しい知識と情報を持ち、親御さんにも共有してあげるようにしてください」

大地震が発生!「命を守る」ために何ができるか考えよう

親が暮らす地域で大地震が起きたら、あなたならまず何をするでしょうか。

通常はなんとか連絡を取って、安否の確認を……と考えると思います。なかには直接行って安否の確認をしたいと考える方もいるかもしれません。でも、災害発生から数日間は、人命救助や被災者支援優先のため、被災地への訪問を控えるよう推奨されています。そのため、どんなに心配でも、離れて暮らす親には、災害発生後の数日間は「自分で自分の命を守る」行動をとってもらうしかありません。

2016年熊本地震で倒壊した建物
災害発生直後は人命救助優先! 被災地への訪問は極力避けましょう ※画像はイメージです

そこで今回、この数日間に何をすべきか、何を備えるべきかを考えるべく『そなエリア東京』を訪問しました。施設内の「東京直下72hTOUR」では、「映画を見に行った帰り、エレベータの中で巨大地震に遭遇した」というシチュエーションで、本格的な災害支援が始まるまでの72時間をどう行動し、何を備えておくべきかを知ることができます。

そなエリア東京 東京直下72hTOUR
「そなエリア東京」では、道路も車も商店も壊滅した街で何をすべきか学ぶことができる

「地震が起きると、街も店舗も、そして自宅内もさまざまなものが揺れによって倒れたり、落ちてくる恐れがあります。まずはそれによって大きなケガ、命を落とすことがないよう、揺れが収まるまではテーブルの下などで身を守る行動をとることを徹底してください。また、あらかじめ家具などの転倒防止対策をしておくことも重要になってきます」

家具転倒防止対策をしていなかった部屋
地震後の様子
そなエリア東京
家具転倒防止対策済みの部屋 
地震後の様子
そなエリア東京

実際、上の写真のように、家具の転倒防止対策をしていない部屋(左)としている部屋(右)では地震後の部屋の様子にここまで差がでるのだとか。離れて暮らす高齢の親の住まい(実家)は転倒防止対策を取っていますか? 今一度見直してみましょう。

津波のスピードは想像以上! 迷っている暇はありません!

そして、地震後、海沿いにお住まいであれば、やはり迷うことなく津波から身を守るため高台に逃げることが重要になってきます。津波は「来た!」と気づいてから逃げたのでは間に合いません。1分、1秒でも早く、1メートルでも高いところに逃げる。どこに、どのように避難するか、親といっしょに普段からルートを確認しておきましょう。

そなエリア東京 津波の高さイメージ
3mの津波で建物の1階部分が埋まる高さ。5m、10mとなると……考えるだけで怖い

「津波は海岸に近い場所、例えば水深10mのところでは、時速約40㎞という速さで押し寄せてきます。東日本大震災の時には『○○の様子が心配』『家に○○を取りに行きたい』と、せっかく避難したのに自宅に戻って犠牲になった方も少なくないと聞いています。あれも持ち出したい、これも必要……など迷っている暇はありません。『一刻でも早くまずは逃げる』ことを、口うるさいくらい徹底しておきましょう」

避難所に身を寄せる場合も、在宅避難を選択する場合も「備え」が重要!

地震やその後の津波、火災が収束した・心配がなくなった後は、避難所、もしくは自宅での避難生活となります。どちらを選択した場合も、最初の数日間は、食料品や生活に必要なアイテムの支援が間に合わず、避難所での支給が1日1個のおにぎりのみ、という可能性も考えられます。そのため重要になるのが「普段からの備え」です。

非常持ち出し袋 基本の中身
そなエリア東京
備えておきたい日常備蓄
そなエリア東京

上の写真は、災害に備えて準備しておきたいアイテムの一部。ライトや上着、ビニール袋などの生活用品のほか、食料品も普段から備蓄しておくようにしましょう。

備えておきたいアイテムに関してはまたご説明しますが、避難所への持出袋にも、在宅避難のためにも少なくとも3日分、出来れば1週間分程度の食料品や水などの備えをしておきましょう。今は水を入れるだけで食べられるバラエティ豊かな非常用食品がたくさんありますし、長期保存できるお菓子などもありますので、親御といっしょに、災害時の備えを考え、見直してみてはいかがでしょうか?

・・・いかがでしょうか。

災害が発生した時、まずは「命を守る」ことを最優先に考え、行動することが何よりも大切です。そしてその後、ライフラインや物流が止まる・支援が届かないことを想定した「備え」をしておくことで、災害関連死の防止にもつながります。

親を災害から守るためにも、豪雨と大地震、それぞれの災害発生時に注意しておくべきポイント、そして必要な備えについて考えていきましょう。

取材協力

本所防災館外観

東京消防庁 本所防災館
〒130-0003 東京都墨田区横川4-6-6
東京消防庁運営する都民防災教育センターのひとつ。地震や都市型水害、局地的豪雨の様子を実際に体験しながら学ぶことができる。

そなエリア東京 外観

そなエリア東京
〒135-0063 東京都江東区有明3-8-35
東京臨海広域防災公園内にある防災体験学習施設。館内では、地震災害後の支援が少ない時間を生き抜くための知恵を学べる。

関連情報

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