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離れて暮らす親のこと。地元での親の暮らしを支えるケアマネジャーに聞く

画像はイメージです

記事の発言・監修・ライター
「オヤノコト」編集部
坂口鈴香

20年ほど前に親を呼び寄せ、母を看取った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて考えるように。施設やそこで暮らす親世代、認知症、高齢の親と子どもの関係、終末期に関するブックレビューなどを執筆

目次

親と離れて暮らす子世代にとって、親が日々どんな気持ちで、どんな暮らしを送っているのか、気にならない人は少ないのではないでしょうか。東北地方の県庁所在地でケアマネジャーとして親世代とその家族を支えている、千葉陽子さん(ケアマネ歴15年)、中山美幸さん(同)にお話をお聞きしました。

人手不足や事業縮小! 親が介護サービスを受けたくても受けられなくなる時代に!?

お二人の自治体では、人手不足のためデイサービスや訪問介護を提供する事業所の閉鎖や規模の縮小が進んでおり、介護保険制度の維持継続に大きな危機感を持っていると口を揃えます。

「都市部ではまだ介護サービスを選ぶことができていますが、過疎が進む地域ではサービスの選択肢は狭く、訪問ヘルパーをお願いしたくても、近くに事業所がなく、離れた地域から来てもらうしかないことも少なくありません」

首都圏とそう変わらない介護保険料(※)を払っているにもかかわらず、介護サービスを使いたくても使えないという実態があることを子世代にも知ってほしいと注意を喚起します。

※第9期(令和6年~8年)平均介護保険料基準額(月額)
宮城県 ¥6,098
青森県 ¥6,715
秋田県 ¥6,565
岩手県 ¥6,093
山形県 ¥6,058
福島県 ¥6,340
東京都 ¥6,320
神奈川県 ¥6,340
千葉県 ¥5,885
埼玉県 ¥5,922
(出典:厚生労働省「第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について

親の異変を察知できたケースとは

そんな状況下で、親世代とその家族を支えているお二人。離れている子どもと親の関係もたくさん見て来ました。日頃の見守りによって異変を察知したケースもあります。

■事例1. 中山さんが担当したケース
・母親(80代):認知症が進行し、特別養護老人ホーム(特養)に入所
・父親(80代):妻の特養入所後一人暮らしに。車を運転して買い物や通院はできており「まだ介護サービスの世話にはならない」と介護認定を受けることを拒否していた
・娘:首都圏在住。年に1回程度帰省し、両親の様子を見ていた

母親の特養入所後、娘さんに「父のことも気にかけてほしい」と言われていたこともあり、中山さんは近くで担当する方を訪問するついでに父親の様子を見ていました。ところが先日、父親が中山さんに「妻が昨日の朝まで家にいたのに、いなくなった。どこにいるか教えてほしい」と訴えたのです。中山さんは見逃せない異変のサインだと判断し、娘さんに連絡するとともに地域包括支援センターとも情報共有。「早めに手を打った方がいい」と意見が一致し、介護申請の手続きをすることになりました。ヒヤリとしたものの、中山さんの日頃の見守りが奏功したケースです。

「通常は、担当の方が施設に入所されるとそこでケアマネジャー(以下ケアマネ)の仕事は終わりますが、これまでの経験によるカンでお父さまの様子を気にかけていました。今は介護申請の手続きをしているところですが、それまでの間、地域包括支援センターに見守りをお願いしています」

■事例2.千葉さんが担当したケース
・母親(80代):東北地方の県庁所在地で一人暮らし。認知症があって閉じこもりがち
・娘:母親の隣町在住。週に2~3回母親の様子を見に来ている
・息子:隣県在住。母親が一人暮らしになってから年末年始やお盆には母親を呼んで自宅に滞在してもらい、様子を見ている

姉弟の連携もよく取れていて、日ごろから母親の様子を共有していました。姉弟は、母親がトイレの失敗が多くなったら施設にお願いしようと決めていて、母親の様子から「その時期がきている」と判断。娘さんから千葉さんに「今日、母に施設のことを言おうと思います」と連絡があり、千葉さんも同席しました。娘さんが母親に施設に入らないかと提案したところ、それまでさまざまなサービスを拒否していた母親が「そこは暖かいの?」と聞いたそうです。ちょうど寒くなってくる時季で、娘さんが「暖かいよ。温かいご飯もあるよ」と答えると、母親は「だったら入る」と同意したのです。その後母親は、「庭仕事が好きな母親が楽しみを見つけて穏やかに暮らせるように」と姉弟が選んだグループホームに入居しました。

母親の状態変化を娘さんが察知し、離れて暮らす息子さんも姉の意見を受け入れて、施設へのスムーズな入所につながったケースです。

親の本音はどこに?

これらの親の変化について「娘さんやケアマネが気づいて、今後の介護方針を決めようとしたとき、息子さんがそれを認めないことはよくある」と千葉さん。母親は息子に心配をかけたくなくて、「大丈夫」と言ったり、本当の気持ちを言えなかったりすることも。「息子さんは母親の言うことを信じて、ケアマネの言葉を聞き入れてくれなくて困惑することも少なくありません。第三者の客観的な意見や提案を、頭ごなしに否定するのではなく、受け入れてほしいと思います」。

また介護認定を受けても、「家に他人を入れたくない」と言って訪問介護などの訪問サービスを拒否する方もいます。「たとえば、家の中で転倒したときに、どんな状況で転んだかを把握して転倒予防の対策を立てようとしても、ケアマネが家に入ることを拒まれるとそれができません。ケアマネは時間をかけて信用してもらうしかないのですが、本人の筋力低下による不安が一因となっている場合も考えられます」と千葉さんは指摘します。自分で掃除ができない、ゴミを捨てられなくて家の中を清潔に保てない。だから他人を家に入れたくない……そんな不安があるのかもしれません。

離れて暮らす子どもが、親の異変に気づくポイントは

離れて暮らす子どもが、親の異変に気づくポイントはどこにあるのか。お二人にアドバイスをいただきました。

●一緒にスーパーに買い物に行こう
親と一緒にスーパーに行ってみましょう。チェックするポイントは、「筋力や歩行能力」。親はかごを持てるか。カートを支えにして歩いていないか。
「お金の払い方」もチェックしましょう。親の認知度が落ちると、小銭の計算が難しくなり、レジで手間取ったり、お札で払ったりするようになります。そのため財布が小銭ばかりになっていることも。

●冷蔵庫を見てみよう
「同じものが大量にないか」「変な臭いがしていないか」がチェックポイント。認知症は嗅覚の低下からはじまると言われています。なお、冷蔵庫チェックは親が見ていないところで行いましょう。

●耳の聴こえ
「テレビの音量が大きすぎないか」「話をしているときに聞き返しが多くないか」を確認しましょう。

●スマホでのやり取り
今の親世代では多くの方がスマホを持っており、LINEやショートメッセージでやり取りをしている親子も少なくありません。「電話がかかってこなくなった」「電話の頻度が多くなった」という変化は何らかのサイン。「仕事中でもしょっちゅう電話がかかって来て、うるさい」で終わらせないで。その陰に異変が隠れていることもあります。

それまで母親がLINEによく写真を添付していたのに、それがなくなって文字での受け答えだけになり、娘さんは「どうしたのかな?」と思っていました。母親は「娘に写真を送りたいけれど、やり方がわからなくなった」と。それまでできていたスマホの操作ができなくなっていたのです。

●親の健康状態は変化する
自分は親の暮らしを知っていると思い込んでいても、齢とともに状態が変化していることは少なくありません。そのひとつが親の健康状態です。どんな持病があり、かかりつけ医が誰なのかは定期的に確認しておきましょう。病気が増えていたり、悪化していたりすることもあります。電話では子どもに心配かけまいと、隠している場合もあるので、足を運んだときに生活の様子を見ることも欠かせません。薬があれば、「これは何の薬?」などと健康状態を確認するきっかけになります。

親の暮らしが変わるどんな場面でも必要になるお金の話をしておこう

「介護サービスを利用する」「入院する」「施設に入る」など、親の暮らしが大きく変化するとき、必ず出てくるのがお金のこと。千葉さんも中山さんも、お金の問題が壁になって介護サービスを導入できないケースをいくつも見てきたといいます。

「たとえば、親が老々介護で限界を超え共倒れになりそうなのに、一人が施設に入ると、もう一人の生活費がなくなるので施設入所が難しいというケースがありました。聞いてみると、貯蓄はあるのに、『それは子どもに残したいから年金だけでやりくりしたい』とおっしゃるのです」。

だから、子世代には親とお金の話をしてほしいと千葉さん。

「タイミングはご家庭によって違いますが、親が入院するとき、介護サービスを使いはじめるなどが目安になるでしょう。そのときに子どもから『介護にかかるお金の話をしよう』と切り出せば話しやすいともいます」

中山さんはこう助言します。

「子どもにお金を残したいと思っている親には、『私たちは私たちで暮らしていけるから、残さないでいいよ。自分のために使ってね』と声をかけてはどうでしょうか。お金を残されても、それが相続争いになる可能性もあるのですから」

年金額、貯蓄額など親の財布事情を子どもが知っておくことに加えて、施設にかかる費用も、だいたいのイメージでもいいので知っておいてほしいとお二人。

「ケアマネは施設情報を持っているので、ぜひ聞いてみてください」

ケアマネジャーとどう付き合う?

「親の本当の気持ちを知るのに、対面でのコミュニケーションに勝るものはありません」と千葉さん。同様に、ケアマネなど介護サービスを提供する側とのコミュニケーションも大切だと強調します。

「ケアマネは、家族が気になっていることや悩みはよく聞きますが、親と会って『うれしかったこと』『よかったこと』などのエピソードも聞きたいと思っています。それが担当する親御さんの一面を知ることにもなるし、その方の希望を実現する道筋にもなるかもしれません」

ただ、ケアマネと親、家族との相性の善し悪しはあります。合わないと思ったら、別のケアマネに変えてもらうこともできるので、遠慮なく相談しましょう。

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