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公開日:

第10回:ご主人60代、奥様70代

60代で有料老人ホームに入居したご夫妻。「意識して自分たちの生活スタイルを守る」(第2話)

写真:高木あつ子

記事の発言・監修・ライター
「オヤノコト」編集部
坂口鈴香

20年ほど前に親を呼び寄せ、母を看取った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて考えるように。施設やそこで暮らす親世代、認知症、高齢の親と子どもの関係、終末期に関するブックレビューなどを執筆


村上浩一郎さん(仮名・68)は妻の玲子さん(仮名・70)と、海沿いの街の有料老人ホームで暮らしています。入居したのは64歳のとき。まだ「老人ホーム」に入居するには早すぎる年齢でした。双方の親が老いる姿を間近に見て、親と子それぞれの視点を得た浩一郎さんは、自らの意思でホーム入居を進めることの大切さを実感。マンションを住み替える感覚で、元気なうちに入居できるホームへの住み替えを決意したのです。

(第1話はこちら)

ホームに入居し元気になった義母
介護の質の高さを実感した

そんなとき、村上さん夫婦と同じマンションで玲子さんの介護を受けながら暮らしていた玲子さんの母親が、介護付き有料老人ホームに入居することになりました。誤嚥性肺炎で入院し、退院後も目を離せない状況になったのです。

それまでも村上さん夫婦は、玲子さんの休息を兼ねて近隣のホームにショートステイしてもらい、ホームの実態を把握するようにしていました。そんな二人が義母の入居先として選んだのは、自身の入居先候補として考えていた住宅型有料老人ホーム(※1)のNホームに隣接し、その介護棟として新たに開設された介護型の有料老人ホーム(※2)でした。

「入居後、義母の心身の状態は一変し、94歳まで明るく前向きに過ごすことができました」

母親の回復は目を見張るほどでした。自室のトイレを介助なしで利用し、浴室や食堂へも自分で歩いて行けるようになったのです。介護棟の質の高さを体感した村上さん夫婦が、このNホームを終の棲家として選んだのは自然な流れでした。

「空室ができました」と連絡をもらったのは、浩一郎さんが65歳で定年を迎える数か月前。部屋の条件が希望に合っていたことから、この機を逃すまいと予定より少し早く入居することにしました。自宅マンションも予想より早く買い手が見つかり、体力のあるうちに引っ越しできたのも幸運だったと相好を崩します。


※1 生活支援などのサービスは付いていますが、介護が必要になると、入居者が外部事業所を契約して訪問介護などの介護サービスを受けながら暮らす有料老人ホーム。

※2 介護が必要になって入居する有料老人ホームで、ホームが提供するサービスを24時間利用することができます。

介護棟への移りやすさと環境が決め手
そして今の暮らしは……

Nホームの決め手は大きく2つあると浩一郎さん。

「Nホームと介護棟との居室数がほぼ同率でした。介護棟への移りやすさに加えて、夫婦どちらか一人が介護棟に移っても、追加料金なしで2部屋使えることも大きな魅力でした」

もう一つが、Nホームの周辺環境です。

「それまで住んでいた市と環境が大きく違わないことに加え、利便性も良好でした。Nホームは最寄駅まで1時間に1本、シャトルバスが運行していて、約10分で駅に着きます」

オススメのイタリアンでの昼飲み。取材当日も、「今日どこにする?」とお店について楽しそうに相談されてました(写真提供・村上さん)

最寄駅周辺は商業施設や公共施設が充実しており、村上さん夫婦もスポーツジムやランチ、買い物にと、この利便性をフル活用しています。
浩一郎さんは週3回ジムに通い、その後は昼飲みをしながらランチを楽しみます。玲子さんもジムやショッピングに出かけ、出先でランチ。朝夕食はホーム内のレストランで摂り、自炊することはほとんどないと言います。近くの海岸まで散歩するのも二人の日課です。波の音を聞きながら、カフェで一服することも。なんとも贅沢な毎日ですが、ホームの入居者は村上さん夫婦よりずっと年上で、80代の方が多いなか、意識して自分たちの生活スタイルを守っていこうという思いもあると聞いて納得しました。これも、快適なホーム生活を維持するための戦略なのでしょう。

出張の多かった浩一郎さんにとって、ホームでの暮らしは「ビジネスホテルに滞在している感覚」なのだとか。そんなアクティブな生活ができるのも、何かあれば常駐する職員にいつでも相談でき、介護が常時必要になれば介護棟で手厚い介護を受けられる安心感に裏打ちされているからです。お互いを思いやりつつ、人生を楽しんでいるお二人。この分なら、二人で長生きして、ホームにかかった費用の元を取るどころかお釣りが来ることになりそうです。

年齢を重ねれば、ほぼ確実に身体機能も衰えてくる。
そのことを考えて、早い段階から動くことで、何か起こっても慌てずに暮らし続けることが出来るということ。それは村上さんが後に続く「オヤノコト」世代に伝えたいことだと思えた取材でした。

取材協力/大和ハウスライフサポート株式会社

オヤノコトネット