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食べ物が豊富にある時代。「ちゃんと食べているよ」という親がまさか低栄養に……?親世代の健康維持に直結する「口のケア」。その大切さや対策について、日本歯科大学教授で、口腔専門のリハビリテーションクリニック「口腔リハビリテーション多摩クリニック」の院長の菊谷武先生にお話を伺いました。
80歳になっても歯を20本以上保とうという「8020(ハチマルニイマル)運動」がはじまったのが、平成元年(1989年)。運動開始当初の8020達成率は7%程度で、平均残存歯数は4~5本ほどでしたが、令和6年の厚生労働省「歯科疾患実態調査」では80歳から84歳までの8020達成率は61.5%にまで伸びています(令和4年調査では51.6%)。
このように歯磨きの重要性が広く浸透し、歯科疾患が減っているのは喜ばしいことです。しかし、親世代が歯の健康を保とうと心がけるのは身体が健康な間だけ。身体機能が衰えてくると、とたんに歯科を受診しなくなるのです。これが今、最大の課題だととらえています。
たとえ20本の歯を保っていても、口の清潔が保てないと口腔内で細菌が繁殖し、肺炎などを引き起こす原因にもなります。加齢によって口腔管理がむずかしくなると、口の環境はもちろん、健康状態にも悪影響を及ぼしてしまうのです。
その一方で親世代は、歳を重ねるほど歯の健康に対するモチベーションが落ちていきます。加えて、歯ブラシもそれまでのようにうまく使いこなせなくなります。昔と同じように磨いているつもりでも、きちんと磨けなくなっているのです。そのうえ、口の感覚も低下し、口中の違和感を持ちにくくなります。
親本人に任せていては、歯の管理はじゅうぶんにできません。そこで子世代にお願いしたいのは、親を歯科医院に連れて行くことです。
親世代ほど、こまめな歯のチェックが必要です。
歯の定期健診は、若い世代が年に1回なら、親世代は半年に1回程度が目安になります。歯の状態が悪化する前なら、治療回数も少なくてすむので、子どもの負担も軽減できるでしょう。なお訪問歯科という選択肢もありますが、歯科医院と比べるとできる範囲が限られてくるので、歯科医院に行くことをおすすめします。
「現役時代の勤務先の歯科にずっと診てもらっている」と、電車に乗って遠くの歯科医院に通うという親もいるかもしれません。しかし、高齢になると自宅から歩ける範囲でかかりつけ歯科をもつべきです。近くにかかりつけ歯科があれば、今後通院できなくなったときに訪問歯科にも対応してくれる可能性もあります。
もうひとつ、気をつけてほしいのが親世代の低栄養です。
子世代は太っていることがメタボリックシンドロームのリスク要因のひとつですが、75歳を超えた親世代は、逆に痩せていることがリスクになります。痩せていると免疫力や抵抗力が落ち、感染症にかかりやすくなるからです。高齢者だから免疫力が落ちるのではありません。高齢で低栄養だから、免疫力が落ちるのです。
私たちはこれまで何十年もメタボの危険性を刷り込まれているので、痩せていることが良いことだという強い思い込みがあります。そのため、親世代の体重が減少していても、それが問題だとは感じないかもしれません。しかし70歳から75歳になったら、考え方を180度転換しなくてはいけません。意識して、「しっかり食べる」という方向にギアチェンジすべきです。
親は「ちゃんと食べているよ」と言うかもしれませんが、その言葉を鵜呑みにしてはいけません。食べているつもりでも、栄養が足りていないことは少なくないのです。特に食べなければならないのが、肉。筋力を維持するために、意識してたんぱく質を摂ることが大切です。
肉を食べるためには、健康な歯が必要ということにもつながるのですが、歯が悪い人ほど炭水化物を摂る傾向があります。炭水化物を摂ることで体重を維持していくことは、あまり健康的だとは言えません。また食べることを意識しないと、同じようなものばかり食べたり、1日2食で済ませたりすることになり、栄養バランスが崩れてしまいます。親世代は、1回に食べる量が減るので、トータルとして摂取する栄養が足りるよう、1日何回かに分けて食べることをおすすめします。子世代が親と食卓を囲むときには、親の食事の様子もさりげなくチェックしてください。
低栄養は徐々に進行します。そこで親の低栄養をはかる指標となるのは、体重です。体重は健康のバロメーター。最近はデイサービスなどでも体重測定をするようになり、低栄養のスクリーニングとしての効果が出ています。日常的に体重計に乗る習慣のない親世代は多いと思いますが、自宅でも体重を測るよう声がけも大切です。
取材:2018年9月
加筆:2025年9月
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