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20年ほど前に親を呼び寄せ、母を看取った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて考えるように。施設やそこで暮らす親世代、認知症、高齢の親と子どもの関係、終末期に関するブックレビューなどを執筆
昨今、親の不動産を狙った「押し買い」被害を耳にすることが増えています。不動産の「押し買い」とはどういうものなのでしょうか。そして悪質な業者から親を守るために、子どもはどんなことに気をつけておけばいいの? 宅地建物取引士でもある、弁護士法人心の倉持茂弁護士にお話をお伺いしました。
親世代を狙った自宅の「押し買い(訪問購入)」が社会問題になっています。
「押し買い」とは、買い取り相談や査定相談を受けていないにもかかわらず、業者が自宅を訪問して貴金属や着物、不動産を買い取ることです。貴金属や着物の「押し買い」も問題となっていますが、今回は不動産の「押し買い」について取り上げます。ただ不動産業界全体が「押し買い」を行っているわけではなく、一部の悪質な業者によるものです。
消費生活センターに寄せられた被害事例では、自宅マンション売却の依頼もしていないのに、しつこい勧誘によって売却契約をさせられ、解約に高額な違約金を請求されたケースや、同様に自宅売却の勧誘を受け、「売却後も住み続けられる」と言われて著しく低額な代金で売却し、賃貸契約をさせられたケースなどが報告されています。後者の事例は「リースバック」を悪用したものです。
「リースバック」というのは、住宅を売却して現金を得て、売却後は売却先と賃貸借契約を締結し、毎月賃料を払うことで、それまで住んでいた住宅に引き続き住むというサービスです。これは以前からあるサービスで、使い方によっては有効です。
被害事例では、買い取り金額が安すぎるのが問題だとされていますが、リースバックの場合、空室で売却をするよりも値段が下がる傾向があります。購入者の立場から見た場合、空室の物件とリースバックにより賃借人が入居している物件を比べた場合、後者の方が物件の利用に制限があるからです。
被害事例では、リースバックをすることによる買取価格への影響や提示する価格の根拠が売り主に説明されていないことが問題だと思います。
それまで「所有権」のあった住宅が、賃貸借契約によって「賃貸借権」に変わります。所有権があればずっと住み続けられるし、修繕なども自由にできますが、賃貸借契約になれば賃料が発生し、借りられる期間も定められます。修繕も自由にはできません。一般的な賃貸借の場合、2~3年で契約を更新することになりますが、「リースバック」の場合、期間が決められていることが少なくありません。だから、ずっと住み続けられると思っていたら、数年で退去しなくてはならないということも起きます。
このような制約が出てくるので、デメリットをしっかり理解した上で契約していないと、「思っていたのと違う」ということになるのです。
こうした「リースバック」のデメリットを不動産業者が親世代(売り主)にきちんと説明していないことに加えて、不動産買い取りの場合はその価格算定の根拠を示さなくてもよいとされていることが、「押し買い」被害が増える要因となっているのは否めません。
前述のように、一概に「リースバック」契約自体が悪いというわけではありません。不当な契約との線引きが難しい面もありますが、大原則は「よくわからない契約書にハンコを押してはならない」ということです。
まともな業者なら、不動産取引を親世代一人に決めさせることはありません。ご家族や親族への相談を促すのが普通です。ですから、「早く売った方がいいですよ」などと言って売り急がせ、ご家族に相談させないようにする業者は危ないと思ってください。
その業者が信用できるか見極めることが肝要です。不動産会社のブランドを確かめましょう。国土交通省の「ネガティブ情報検索システム(※1)」を利用すれば、これまでにその業者が行政処分されていないかを確認することができます。各自治体でも行政処分の一覧をウエブサイト上に挙げているので、そこで確認するのもよいでしょう(※2)。
また、宅地建物取引士や不動産鑑定士、弁護士、司法書士等の資格者から専門的なアドバイスを受けることも被害を防止するために有用です。
※1国土交通省の「ネガティブ情報検索システム」<宅地建物取引業者>
※2東京都庁「宅地建物取引業者に対する行政処分について」東京都の場合(2025年)
そして契約内容について理解し、急いで契約せず、子どもなど家族と相談しながら検討を進めましょう。
なお、「リースバック」をする場合、次の2種類の契約を締結することになります。
では、親が住宅の「押し買い」被害に遭っていたことがわかったらどうすればよいのでしょうか。
押し買いにより個人が住宅を不動産業者に売却した場合、現行法では特定商取引法や宅地建物取引業法上のクーリングオフができません。
すでに契約してしまっている場合、契約をやめる(解除する)方法が2つあります。①手付の解除と②違約の解除です。
①手付けの解除とは、一定の期間(1週間程度で定められることが多いです)までは、親(売り主)側がもらった手付金の倍額を払えば契約をやめることができるというものです。②違約の解除の場合、違約金(売買価格の20%程度で定められることが多いです)を支払うことで契約を解除することができます。それでも、“勉強代”とするには多額な金額を失うことになるのは間違いありません。
各自治体の消費生活センターに相談するのもよいでしょう。同じような事例を扱っているのでそれらの情報を得るとともに、不動産に詳しい専門家につないでくれることもあります。
親が家族や親族以外の人と不動産の話を進めている場合には注意が必要です。不動産トラブルは被害金額が莫大ですし、大切な住まいを失うことになってしまいます。
危険なシグナルを感知するためにも、日ごろの親とのコミュニケーションが大切です。子世代もあらかじめ親に「こんな被害が増えている」と「リースバック」というキーワードを伝えておき、注意喚起しておきましょう。そして、親から「リースバック」や「不動産業者」などというキーワードが出るようだったら要注意。不動産の取引話が進んでいないか確認し、必要に応じて専門家などの第三者に相談してください。
不動産だけでなく貴金属や着物の「押し買い」被害も増えています。注意喚起をするとともに、親の判断能力が衰えていると感じたら、「家族信託(※1)」や「任意後見制度(※2)」「成年後見制度(※3)」などの制度の活用を早めに検討しましょう。
※1 親の老後や介護時に備えて、保有する不動産や預貯金などを信頼できる人に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法
※2 本人に十分な判断能力があるうちに、認知症や障害の場合に備えて、あらかじめ本人が選んだ人(任意後見人)に代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度
※3 認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人がさまざまな契約や手続きをする際に、法的に権限を与えられた後見人等が財産の管理や福祉サービス等の契約を行い本人の権利を守り生活を支援する制度
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