40歳を過ぎたらオヤノコト

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高齢の親の運転を考える~運転免許証を自主返納!? ちょっと待って、その前に、親の運転をサポートすることから考えてみる

80歳以上の4人に1人が運転をしているという事実

「オヤノコト」世代の40代男性から、こんな体験談が寄せられました。

「帰省をした時、車を運転する母(70代後半)の様子がおかしいと感じました。母にはすぐに病院で受診するよう強く勧めました。診察の結果、認知症予備軍であることが判明。車は廃車にしました」。

高齢ドライバーによる交通事故が多発し、重大な社会問題として注目される昨今ですが、このように、廃車や運転免許証の自主返納がスムーズに進むケースは少ないのが現状です。なぜならば、高齢者の運転は、本人だけではなく、家族や社会も一体となって取り組まなければならない問題だからです。

まずは、親世代と「オヤノコト」世代が本音で話し合い、社会のサポート体制なども調べながら、家族にとって最善の解決策を考えることからスタートしませんか。

高齢ドライバーの事故の特徴~ケース事例1

コンビニの駐車場。両隣の車に注意しながら狭いスペースに駐車しようと、ハンドルを何度も切り返し、前進とバックを繰り返していたが、突然、思わぬスピードで後退。車輪止めを乗り越え、店の壁面に衝突してしまった。

原因
ハンドルに意識が行き過ぎると、アクセルとブレーキの踏み変えの際に、一瞬、足の位置が曖昧になり、踏み間違いが起こりやすいものです。また、思わぬスピードで急発進してパニックになり、さらなる事故を誘発しかねません。

高齢ドライバーの事故の特徴~ケース事例2

左折の時、横断歩道を誰も渡らないのを確かめて曲がろうとしたら、赤信号への変わり目に、自転車が突然現れ、接触。スピードは出ていなかったが、自転車ごと転倒したことで、相手は重傷を負ってしまった。

原因
突然現れたといっても、自転車は近くに迫っていたはずです。それを見逃したのは、加齢による注意力・集中力の低下が原因と考えられます。また、急ブレーキを踏むまでの反応時間も、高齢者は長くなる傾向があります。

高齢者の運転ではアクセルとブレーキの踏み間違いが多い

年齢に関係なくあり得ますが、高齢になるほど、発生率が高まる傾向があります。原因としては、判断力・注意力の低下のほか、足の関節が硬くなってペダル操作がスムーズに行いにくいことも挙げられます。また、後退時には、体をひねってペダル操作を行うことも原因と考えられます。

事故を未然に防ぐために~親のために「オヤノコト」世代はどうする!?

高齢になれば、誰でも運転能力は低下します。「親の運転はちょっと危ないな」と家族が感じるようなら、本人に自覚を促すとともに、本人と家族が本音で話し合い、早目に安全対策を講じるようにしましょう。免許証の自主返納を求める風潮がありますが、選択肢は一つではありません。「夜や雨の日は運転しない」「一人では運転しない」「高速道路は走らない」など、できるだけ危険な運転状況を避けるために、家族のルールを設けるのは、一つのアイデアでしょう。また、事故のリスクを避けるには、安全運転をサポートする車への乗り替えという方法もあります。

親の安全な運転を応援①先進安全機能を満載したセーフティ・サポートカー(サポカー)

近年は、衝突被害軽減ブレーキを標準装備した「サポカー」、高齢者の事故防止のために衝突被害軽減ブレーキに、ペダル踏み間違い加速抑制装置が装備された「サポカーS」が各メーカーから販売されています。こうした車は、セーフティ・サポートカー(サポカー)と呼ばれ、交通事故の発生防止・被害軽減対策として、満65歳以上の高齢ドライバーを対象に、自治体によっては購入費を補助するなど、国が普及を促進しています。また、現在乗っている車に後付けできる安全運転支援装置の購入・設置工事費用も補助しています(各自治体にご確認を)

なお、2028年9月から新型自動車を対象に「ペダル踏み間違い防止装置」の搭載が義務づけられることになります(国土交通省)。

トヨタのサポカー
ホンダのサポカー

親の安全な運転を応援②運転免許を返納する前に考える「サポートカー限定免許」

買い物や通院などで、自動車がないと移動手段がなくなり日常生活が成り立たなくなってしまうという高齢の親のために、新たな選択肢として「サポートカー限定免許」があります。これは、先進安全技術(衝突被害軽減ブレーキ・ペダル踏み間違い加速抑制装置)が装備された普通自動車「サポートカー」に限り運転することができる運転免許です。申請にあたり、年齢の制限はなく、運転免許の更新手続きと併せて行うことができます。

サポートカーの限定免許の対象車両

注)後付けの装置は対象外。また、「サポートカー限定免許」で、サポートカー以外の普通自動車を運転した場合は、道路交通違反となります。ご注意ください。

親の安全な運転を応援~③後付けできる「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」

今乗っている自動車に後付けで、(アクセルトブレーキの) 「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」を装着できます。各自動車メーカーを部品用品メーカーから、さまざまな製品が販売されており,機能や価格は異なります。また、後付けと聞くと、動作に不安を感じるかもしれませんが、国交省で審査をし認定する制度がありますので、ご安心を。

日本特殊陶業の踏み間違い事故防止装置「アイアクセル」

注)適合する車種に制限があります。年式が古い場合は装着ができない場合があります。

「歳だから・・・」ではなく、親の運転を“見守る”ことも忘れずに

「運転を続けたい」という親の気持ちは尊重したい、でも私たち家族はやっぱり心配・・・そんなときは、まずは現在の親の運転がどのような状況なのか・・・たまには、親の運転する自動車の助手席に乗って、まずはさりげなく様子をみてはいかがでしょうか。

「運転時認知障害早期発見」チェックリスト30 (警視庁)

免許返納という選択

●本人の意思を尊重する

 運転免許証の「自主返納」は、必ず本人が申請することになっており、各地区の警察署や運転免許センターで受け付けています。大切なのは、家族が強要するのではなく、できるだけ本人の意思を尊重すること。運転に不安を感じるようになる前に、自主返納の時期などを家族で話し合っておきたいものです。

●返納後の身分証明は?

 運転免許を返納した方は、「運転経歴証明書」を申請できます。これは、運転免許を返納した日からさかのぼって5年間の運転に関する経歴を証明するもので、身分証明書として利用可能です。また、提示することにより、自治体や協賛する企業・団体などからさまざまな特典や優遇を受けることができます。

●運転経歴証明書で受けられる特典(優遇措置)

 運転経歴証明書で受けられる特典(優遇措置)は、「自治体主催の特典」と「民間主催の特典」の2種類に分けられます。詳細な条件や内容は、各自治体や都道府県によって異なります。

自治体主催の特典(例)
《交通》市営・県営バスや電車の運賃割引/優待券、指定タクシー業者の運賃割引
《家具・家電》補聴器や電動車イスの購入費用を割引

《日用品》商店街での購入費用を割引、メガネ、補聴器の購入費用を割引
《レジャー》レジャー施設・テーマパークの入園料、ホテルの宿泊料、温泉・銭湯の入浴料、美術館・博物館の入館料を割引
《美容》美容院、理容院の料金を割引
《墓石・仏壇等》葬儀、仏壇仏具、墓石を割引    など

参考)高齢者運転免許自主返納サポー協議会仮名企業・団体の特典一覧より

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