40歳を過ぎたらオヤノコト

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第7回:相談者30代、対象者(両親)70代

30代で突然はじまった両親の介護。仕事と介護を両立するには(第4話)

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記事の発言・監修・ライター
「オヤノコト」編集部 坂口鈴香

20年ほど前に親を呼び寄せ、母を看取った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて考えるように。施設やそこで暮らす親世代、認知症、高齢の親と子どもの関係、終末期に関するブックレビューなどを執筆

荒木真由美さん(仮名・38)は、父親が交通事故で高次脳機能障害を負い植物状態になってしまいました。脳血管性認知症との診断を受けた母親は、事故後いっそう症状が進み、一人暮らしが難しくなったのです。ホーム見学の過程で、父親に必要な医療ケアができるホームがあることがわかり、両親が二人で暮らせるホームに入居することになりました。前施設から移った父親の表情も穏やかになり、ホッとしています。

(第3話はこちら)

上司から「使える制度は使い倒そう」と心強い助言
介護休暇をフル活用した

さて、荒木さんは正社員として勤務しつつ、両親の介護やホーム選びを進めましたが、どう両立したのでしょうか。

「はじめは有給休暇を使っていましたが、自分の病気で使い切ったこともあり、上司からは『使える制度は使い倒そう』と言ってもらい、介護休暇をフル活用しました。介護される人1人につき5日取得できるので、うちは2人で10日使えました」

毎年の人事評価面談の際、両親の介護については上司にすべて報告し、理解もしてくれているといいます。

「同僚には、介護休暇を取得するとき全員にメールしました。仕事で関係する同僚には、介護の事情も話しています。私の所属している部署の業務は、自分のやるべき仕事さえやれば同僚にしわ寄せが行くことがないのも、介護休暇を取りやすい要因でした」

母の変化を受け入れられない弟と険悪になったことも
夫の存在が支えに

30代の荒木さんにとって、親の介護は想定より10年以上早かったはずです。悩みに共感できる同世代の友人などはいなかったのではないかと聞くと、「夫がいたから乗り越えられました」という答えが返ってきました。だから、独身の弟の方がより精神的につらかったのではないかとも推しはかります。

「弟とは仲が良いですが、それでも介護では険悪になったこともありました」と明かします。

「男と女では母に対する感情が違うと思います。私は、母は病気なのだから、たとえば料理ができなくなるなど、変わっていくのは仕方ないことだと考えていました。でも弟は母が変わっていくことが受け入れられず、そのたびに電話してきて、イライラすることもありました。弟にとって母は特別なのでしょうし、私に話を聞いてほしかったのだと思います。それでも私にとっては、母が何かをできなくなったのは事実だし、それならどうするかを考えようと思っていました。夫は弟に共感してくれて、『男はそんなものだ』と言ってくれました。こうした食い違いを夫に聞いてもらえたのはありがたかったです」

男女の差というより、荒木さんの性格やこれまでの仕事で身に着けたとらえ方なのかもしれません。ご両親の介護経験を、前向きに、淡々と話してくださった荒木さんですが、お父さまの事故には人一倍悲しく、つらい思いをされたのは間違いないでしょう。それを乗り越えるために身に着けた考え方だったのかもしれないとも思いました。

母親の認知症による変化を受け入れられなかった弟も、母親のホーム入居後は穏やかになったと感じています。弟にとっても、30代での介護は大きな障壁だったのでしょう。荒木さんとともに向き合えたことが力になるといいなと思います。

もうひとつ、懸案だった実家の片付けも、「オヤノコト」相談室を通じて終えることができました。

「実家はリフォームして弟が住むことになりましたが、親がため込んでいたモノは片づけなければなりません。30代の体力のあるうちにできたのはよかったと思います」

母親がホームに入居して半年。ホームに慣れてはきたものの、スタッフに気を遣って、言いたいことも言えないでいるのが目下の心配のタネ。ですが、これも時間とともに解決するのではないかと考えています。

荒木さんのお話を聞きながら、何度も荒木さんはビジネスパーソンとしても有能だろうと思わされました。きっとこれから問題が起きても、弟と協力しながら乗り越えて行けるだろうと確信しました。そして時には、愚痴でも弱音でも、私たちに話してほしい。「オヤノコト」相談室はそんな存在でありたいと思います。

みんなで考える「そろそろ親のこと、自分のこと・・・」

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例えば、「離れて暮らしている高齢の親のことが心配」「親の住まいはどうする?」という問題を解決しようとすると、「自分の親に適したサービスは?」「お金の準備は?」「空き家になった実家はどうする?」と、次々に連動した新しいお悩みが出てくるもの。

「オヤノコト」相談サービスでは、各専門の相談員と連携しながら、『全部まとめて』相談をお受けします。出版事業で培ってきた知見とネットワークを生かし、経験豊富な相談員を揃えて皆様のお悩みに向き合います。

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