40歳を過ぎたらオヤノコト

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第7回:相談者30代、対象者(両親)70代

30代で突然はじまった両親の介護。夫と一緒に住むという目的が母親を前向きにした(第3話)

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記事の発言・監修・ライター
「オヤノコト」編集部 坂口鈴香

20年ほど前に親を呼び寄せ、母を看取った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて考えるように。施設やそこで暮らす親世代、認知症、高齢の親と子どもの関係、終末期に関するブックレビューなどを執筆

荒木真由美さん(仮名・38)は、父親が交通事故で高次脳機能障害を負って植物状態になり、医療施設型ホスピスに入ることになりました。脳血管性認知症との診断を受けた母親は、事故後いっそう症状が進み、ホーム入居を決意。「オヤノコト」相談室が候補として挙げた3つのホームを見学することになりました。

(第2話はこちら)

母親の意向を最優先。距離は二の次に

「オヤノコト」相談室が候補として挙げた3つのホームを見学した荒木さん家族。Rホームは医療ケアが受けられなかったのに対して、KホームとGホームは父親に必要な人工呼吸器や胃ろう、痰の吸引といった医療ケアが可能だということがわかりました。

これで、母親だけでなく、両親ともに同じホームに入居するという新たな選択肢が生まれたのです。母親にとっては、「夫と一緒に住むために東京に行く」というポジティブな目的となりました。

さらに、Kホームは24時間看護師が常駐しており、母親の印象も良かったことから、Kホームへの入居を決めたのです。「私の自宅からGホームはすぐ近くなのですが、Kホームは少し遠いなと思いました。それでも、母が気に入ることの方が大事です。母に苦痛なくホームでの暮らしを送ってもらうことを考えると、距離は二の次。母の意向を尊重しようと思いました」

運営主体が変わったばかりのホーム。そのメリットとは

こうして、Kホームへの入居が決まり、見学から2カ月弱というスピードで母親は新しい住まいに入居しました。ちょうどKホームの運営主体が変わったばかり、というタイミングでした。ホームのM&Aは珍しいことではありません。それでも、特に入居後となると入居者への影響は少なくありません。ですが、荒木さんにとってはメリットも感じられました。というのも母親は、まだ入居者のいないフロアに一人で入居することになったのです。これをデメリットと感じる人もいると思いますが、荒木さんは違いました。

「母は見当識障害があったので、間違って別の人の部屋に入る心配がありました。他の入居者がいなければ、迷惑をかけることもないでしょう」

一方で、ケアについては問題だと感じることも少なくありませんでした。

「これは運営主体が変わったこととは無関係だと思いますが、母は元気ですしフロアに一人ということもあって、ケアを忘れられがちだったり、洗濯物がかえってこなかったりなど、気になることもありました。これはオヤノコト相談室にも報告して、改善を申し入れてもらうなどサポートしてもらいました。入居当初はイベントも少なかったのですが、「オヤノコト」相談室に相談すると、秋以降は外出イベントも増えてきました」

父親の表情が穏やかに

父親は母親に半月ほど遅れてKホームに入居しました。

「ケアは期待どおりでした。驚いたことに、入居1週間で、父の表情が変わって穏やかになったんです」

別フロアですが、母親が毎日父親の顔を見に行っているからなのか、ケアのおかげなのかわからないとしつつも、痰の吸引では前にいた施設のように苦しそうではないことに安心しています。

ただ、事故につながる可能性のあるインシデントはあったので、これも「オヤノコト」相談室を通じて改善をはかってもらったといいます。

「個人が施設に意見や要望を伝えると、どこまで真剣に対応してくれるか不安なところがありますが、オヤノコト相談室を通じて意見を伝えられるのはありがたい。これもオヤノコト相談室の大きな存在意義だと思います」

ありがたい言葉をいただきましたが、本来生命にかかわる事故などはあってはならないことです。とはいえ、老人施設という性格上、ゼロにするのは難しい面もあるのが現実です。「オヤノコト相談室という第三の目があることで、ご紹介した入居者の方のみならず、全入居者の利益」にもつながるのであれば、私たちにいくらでも意見を伝えてほしいと思っています。
(第4話に続きます)

みんなで考える「そろそろ親のこと、自分のこと・・・」

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例えば、「離れて暮らしている高齢の親のことが心配」「親の住まいはどうする?」という問題を解決しようとすると、「自分の親に適したサービスは?」「お金の準備は?」「空き家になった実家はどうする?」と、次々に連動した新しいお悩みが出てくるもの。

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