40歳を過ぎたらオヤノコト

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親世代の加齢に伴う心のケアも大切に

記事の発言・監修・ライター
尚宏 大澤
「オヤノコト.マガジン」編集長大澤尚宏氏

バリアフリー・ライフを応援する生活情報誌「WE’LL(ウィル)」創刊。その後、高齢者社会にスポットを当てた「オヤノコト」をキーワードとしたフリーペーパー、メディアサイトの運営を行っている。

先日オヤノコト.ステーションに、80代後半の女性から老人ホームへの入居を検討しているので相談にのって欲しいというお手紙をいただいた。

早速スタッフが御電話を差し上げると、その方は東京郊外の一軒家にお一人暮らしとのことだったが、老人ホームへの入居を考え始めている理由は「庭の手入れ(草むしりなど)が難しくなったので」らしい。

私は、「なるほど、今年は猛暑や長雨で体調も崩しやすかったし、高齢の女性が広い一軒家の庭の手入れは身体的に辛くなったから、老人ホームへの入居を検討しているのだな」と何の疑問もなく思った。

ところが、応対したスタッフの話を聞いてみると、少しニュアンスが違っていた。

私は、老人ホームを検討している理由は、単純にご自身が辛いという理由だけだろうと思ったのだが、実際には庭の手入れが出来ないことで、近所の方々の眼、つまり、「あの人は庭の手入れもしない」=「だらしがない人」と見られることが辛いので、(そんな状態なのであれば)老人ホームに入居したいということらしい。今や、お墓参りだって代行してくれる時代だ、草むしり程度であれば、家事代行業者でも、便利屋さんでも、お金を払えばやってもらえる。

しかしながら、推測するに、家事代行など自身ですべきことを他人に任せることや他人を家に入れることに親世代はまだ抵抗感があるのかもしれないし、そのようなサービスを知らないのかもしれない。

だが、このようなサービスを利用することも親が抱える課題のひとつの解決方法だし、親世代が知らないようならば、子世代が教えてあげるのも親孝行だ。

また、前述のような抵抗感があるようならば、まず子世代自身が業者を見極める作業を事前にやってあげることも可能であろう。

先の高齢の女性のご家族(息子さんや娘さんなど)がどのような状況なのかはわからない。忙しい子世代には、なかなか親の気持ちまで斟酌してアクションできる余裕がないことも確かであろう。

とは言え、在宅で一人暮らしの高齢の親にとっては、このような些細な家事ひとつでも身内には口に出せなくても、悩んでいることや、困っていることが多々あるのかもしれない。

「ウチの親は実家で一人暮らしだけど、まだまだ元気だし大丈夫」と思っている方も多いだろうが、怪我や病気などのリスクについてのケアだけでなく、高齢期を迎えた親の心(気持ち)のケアも決して怠らないよう心掛けていきたい。
(資料)
●家事支援サービスを利用していない理由
1.価格が高いため
2.家族内で対応できており、サービスを利用する必要がないため
3.他人に家の中に入られることに抵抗があるため
4.他人に家事・育児等を任せることに抵抗があるため
5.セキュリティ(破損、盗難、プライバシー情報の洩れ等)に不安があるため
6.どの会社が良いサービスを提供しているのかわかりにくいため
7.特に理由は無い
8.どのようなサービスが提供しているのか分かりにくいため
9.サービス・商品の質に不安があるため
(経済産業省2016.3より)
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。

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