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自分の希望した家族に財産を渡すために、家族信託の活用を

記事の発言・監修・ライター
尚宏 大澤
「オヤノコト.マガジン」編集長大澤尚宏氏

バリアフリー・ライフを応援する生活情報誌「WE’LL(ウィル)」創刊。その後、高齢者社会にスポットを当てた「オヤノコト」をキーワードとしたフリーペーパー、メディアサイトの運営を行っている。

以前、家族信託の「認知症対策信託」を紹介したが、今回は自分が亡くなったあとに自分の希望した家族に財産を渡したいと考える場合の「家督承継信託」を紹介したい。
例えば、先祖代々から引き継がれている財産の所有者Aさん、長男Bさん、Bさんの妻、次男Cさんがいるとしよう。Aさんは財産を初めにBさんに相続させ、Bさん死亡後は妻には相続させずに次男Cさんへと、直系血族に渡したいと考えている。
そこで家族信託を利用し、来世も守ってほしい財産として、Aさんを財産を託す人、Bさんを託された財産を管理する人、CさんをBさん死亡後に財産を管理する人、とする契約を結ぶ。
ここで①財産は譲渡禁止である②財産は相続によっては承継されない③財産の管理義務は管理者の死亡によって消滅し、次の管理者に管理義務が移行する、と規定しておくことがポイントだ。この契約の主なメリットはBさん死亡後、財産をBさんの妻に渡さず、Cさんに渡すことができることだ。
相続の場合、配偶者は常に相続人となり、財産の相続権を持っている。そのため、配偶者が遺留分減殺請求(=自分の最低限の遺産の取り分を確保できる制度)を行うかもしれない。しかし、上記の契約により、遺留分減殺請求を回避することが可能となるため、直系血族以外に財産が渡らないよう防げるということだ。
家族信託以外の方法としては遺言を利用する方法があるが、これも万全ではない。
AさんがBさんに財産を相続させると遺言に残したとする。その場合、①遺言は一代限りにしか有効にならないため、Bさん死亡後、Cさんに財産を相続させることができない②Bさんが財産を相続したあと、Cさんに同様に相続させる保証はなく、財産がBさんの妻に相続される可能性がある③BさんがCさんに財産を相続させると遺言に残していたとしても、Bさんの妻には相続権があり、さらに遺留分減殺請求が行えるため、すべての財産をCさんに相続させることができない可能性がある。
しかし、家族信託を利用した場合は財産を長男から次男へと直系血族のみ、自分の希望通りに渡すことができる。
家族信託には他にも「障害者等支援信託」「永代供養信託」「事業後継者指定信託」など活用方法がいくつもある。ただ、文章にするとわかりにくいので、具体的に知りたい人は「オヤノコト」相談室を利用してほしい。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。

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