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気になる親の健康 「熱中症」や「低栄養」に要注意

記事の発言・監修・ライター
尚宏 大澤
「オヤノコト.マガジン」編集長大澤尚宏氏

バリアフリー・ライフを応援する生活情報誌「WE’LL(ウィル)」創刊。その後、高齢者社会にスポットを当てた「オヤノコト」をキーワードとしたフリーペーパー、メディアサイトの運営を行っている。

離れて暮らしている親、あるいは同居していても昼間ひとりになる親がどんなふうに過ごしているか、子ども世代の方は、少なからず不安になることでしょう。
特に暑い時期に心配なのは熱中症。平成28年には、熱中症で搬送された人は47,624人で、そのうち半数以上の25,228人が高齢者であるという数値もでています。
私の知人でも、高齢の父親が畑に出たまま戻らないので、様子を見に行ったら、熱中症で倒れており、病院に搬送されましたが亡くなってしまったという悲しい事故がありました。熱中症は、炎天下や車の中以外に、高齢者の場合、屋内発症率が高くなっています。
成人の体内水分量は60%ほどですが、高齢になると体内の水分量が約50%程度まで減少するためというのが原因の1つ。その上、喉が渇きにくいこと、頻繁にトイレに立つことが億劫なので水分摂取を控える傾向があることなどから、若年層に比べて脱水になりやすいのです。
そしてなにより、室内で熱中症を引き起こす大きな要因が、「エアコンを入れない高齢者が多い」ということにあります。
エアコンは「身体に悪い」、「電気代がもったいない」というイメージをいまだに強くもっている高齢者が少なくなく、暑くても我慢してしまう人が多いのです。
日頃から、親には「暑さを我慢せず、エアコンや扇風機を使うように」と繰り返し伝えましょう。
また、外出から帰ったら窓を開けて風を通す、部屋のよく見えるところに温度計を置いてこまめにチェックする、カーテンや簾などを使って直射日光が室内に入るのを避けるよう伝えることも大切です。もう1つ、1年を通して気にかけたいことに「低栄養」があります。
「今のような飽食の時代に、まさか」と思うかもしれません。
しかし、弊社の調査で、高齢のご夫婦が自立型の老人ホームに入居した理由の中で、「3食作るのが面倒になった」という奥様の声が大変多いという結果が出ています。
弊誌の読者でも「昼間一人で食べる気がしない・・・」と昼食を抜いてしまう義理の母親に悩んでいる方もいます。
実際、食事を作ることが億劫で、軽食で済ませてしまう高齢者が少なくありません。
家族がいるなら、多少面倒でも料理して食べさせたいと思う親もいるでしょうが、自分だけだと、意外と簡単に済ませてしまうようです。
しかし、そうした生活を繰り返すことで「低栄養」なり、様々なリスクを抱えることになってしまいます。
国立長寿医療研究センターが、平成24年に在宅医療患者の高齢者を対象に調査した結果によると「低栄養」の人が37.4%いて、さらに、「低栄養のおそれあり」も加えると70%にも上りました。
「低栄養」になれば、免疫力が低下して病気にかかりやすくなる、歩くのが遅くなる、歩けなくなるといった症状も出てきます。さらには認知機能の低下、筋肉量や筋力の定価、骨量減少など起こりやすくなります。
米国の研究では「低栄養」は病気の回復が遅くなるだけでなく、合併症の発症率も高くなるという結果も出ていることから、やはり親の食事には、気を配りたいものです。
とはいえ、言葉だけで「3食栄養のバランスを取ってしっかり食べてね」と言っても、そう簡単に食の習慣を変えることは難しいことでしょう。
理想は、管理栄養士と相談しながら献立を作って、栄養に関する意識を高めることですが、まずは「低栄養」予防の一案として、食事の宅配サービスを利用したり、市販のユニバーサルフード、栄養補助食品を利用したりするのはいかがでしょう。
今は栄養バランスをしっかりと考えた宅配サービスは多くあり、スーパーでも栄養補助食品などは専用のコーナーがあるところもあるので、食事に加えるよう勧めましょう。
たまには、親と一緒に食卓を囲んで、楽しい食事をとってもらうことも、大切な「低栄養」対策といえますね。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。

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