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「長生きリスク」の解決策とは

記事の発言・監修・ライター
尚宏 大澤
「オヤノコト.マガジン」編集長大澤尚宏氏

バリアフリー・ライフを応援する生活情報誌「WE’LL(ウィル)」創刊。その後、高齢者社会にスポットを当てた「オヤノコト」をキーワードとしたフリーペーパー、メディアサイトの運営を行っている。

以前の記事で、「長生きリスク」という言葉は以前から有料老人ホーム事業者の間で使われていた言葉であると書いた。
その一つは、老人ホーム利用者の利用期間が長期になったために毎月の費用の支払い原資が底を突いて支払い不能になり、退去を余儀なくされるという利用者のリスク。そしてもう一つは、事業者が利用者から入居時に一括して預かった前払家賃の償却期間を超える利用者が発生した場合、事業者としてその利用者からの家賃収入が無くなってしまうという事業者にとってのリスクである。
もちろん、それらを回避するために有料老人ホーム事業者もさまざまな対策を取ってきた。
例えば、利用者のリスクに関しては、入居前に利用者の将来的な支払い能力を確認するための資産確認資料を提出することを求め、そこで支払い能力に不安が生じた場合には入居を断るなどの対応。
さらに、事業者のリスクに関しては、従来の家賃一括前払制度を廃止して、家賃は毎月支払い制にすることで、いわゆる償却切れによる家賃収入がなくなることを回避するなどである。
しかしながら、これらの対策は事業者にとってのリスク回避にはなるが、利用者にとってのリスク回避にはなっていない。
この問題は長らく解決の糸口が見えないままだったのが、どうやら一つの解決策が最近になって見えてきた。
最近の新しい動きとして、「介護付き・サービス付き」ならぬ「仕事付き」の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が事業化されている。
経済産業省が提唱する「仕事付き高齢者向け住宅」のモデル事業として神奈川県の社会福祉法人が取り組んだ「野菜の生産と販売」という仕事が付いたサービス付き高齢者向け住宅の話題がメディアでも紹介されていた。
まだまだ元気な高齢者が仕事をして収入を得ながら老人ホーム・サ高住で暮らすという、まるで同じ職場の社員が住み込み、あるいは社員寮で共同生活を送るイメージだが、仕事が生きがいになり、収入も得られることで住み続けることができるのであれば利用者にとってメリットは大きいのではないだろうか。
そうなると、長生きリスクの回避にもつながるかもしれない。
私の見立てでは、「仕事付き」は今後のトレンドになってゆく可能性は大きいと思われる。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。

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