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「オヤノコト」世代のための公的介護保険入門~ある日突然始まる介護のために最低限知っておくべきこと

公的介護保険制度の利用に必要性が生じたら、とにかく早く要介護認定申請を

父親が昨年春、脳梗塞で倒れ、入院。急性期の症状が治まった時点で、認知症が相当進んでおり、これまでのようなひとり暮らしは無理と医師から宣告されました。

そこで、退院後の介護体制について病院のソーシャルワーカーと相談することに。

その時点では、家族が在宅でケアするか、老人ホームに入居するか未定だったのですが、とにかく早急にするよう言われたのが介護保険の要介護認定申請でした。

その理由は、認定結果が早く分かったほうが、介護保険を使ってどのようなサービスをどれだけ利用できるかが分かり、介護計画を立てやすいこと。

また、利用限度額内であれば、最終的な認定通知が来る前でも、申請日に遡って自己負担1割でサービスを利用できるからです(所得により2割の場合もあります)。

そこで、早速、役所の介護保険課に電話をかけると、父親が住む都内某区では、“地域包括支援センター”で介護保険の被保険者証(※65歳になると郵送される)を持参し手続きをするよう指示されました。

申請手続きは、申請書に必要事項を記入するだけで特に難しくない

地域包括支援センターでは、「介護保険 要介護認定・要支援認定 申請書」という用紙に必要事項を記入しました。

記入事項は、父親と申請者である私の氏名、住所などその場で書けるものが中心でしたが、認定審査で使われる意見書の作成について、依頼する主治医に関する情報を前もって調べておく必要がありました。

主治医の所属医療機関の名称と所在地&電話番号、診療科名、氏名(フルネーム)を正確に記入することが求められるからです。

申請手続きを終えると、介護保険の利用者ガイドブックなど、後々、役立つ資料をもらうことができました。

また、下記のフローチャートのような、介護保険認定を得るまでの手順の説明がありました。認定申請さえしてしまえば、あとは、定まった手順を踏んでいけばよいため、手続き上、特に難しいことはありませんでしたが、父親の場合、すべてのステップが完了するまでには結構時間がかかり、約2カ月を要しました。

<介護保険に基づく介護サービスの利用手順>
STEP(1):要介護認定申請

STEP(2):訪問調査

STEP(3):認定結果通知

STEP(4):事業者選択

STEP(5):ケアプラン作成

STEP(6):サービス利用開始 

自立生活能力が危うくなっていると思ったら、介護保険の利用を考えるべき

父親のケースでは、入院中に退院後の自立した生活は無理という判断が下ったため、公的介護保険制度利用の手続きに迷わず進むことができました。

けれども、入院のような決定的な出来事がなくても、親の自立生活能力の低下に子が気付く場合はあるはずです。

実は、父親にも、部屋が片付けられず大事な郵便物を次々になくすといった、認知症による自立生活能力低下の兆候が入院以前からすでに現れていました。

けれど、その一方で、ゴルフに出かけるなど、カラダは元気だったため、公的介護保険制度の認定申請には時期尚早だろうと決めつけていたのです。

しかし、いま振り返ってみれば、もっと早く認定申請をすべきだったのです。審査の結果、“要支援・要介護に該当せず”(自立)の判定が下されたとしても、自立生活能力が低下しており、将来的に介護を必要とする可能性がある高齢者がここにいるということを行政側に知らせることできます。

さらに、認知症予防・支援などの介護予防事業も利用できたからです。

支給限度額と自己負担額から、介護に要する費用や労力を見積もる

審査の結果下った父親の要介護状態区分は、「要介護2」。

この区分だと、下記の表のように、支給限度額範囲内であれば、2万円弱で様々な介護サービスが利用できます。

父親は、認定申請を行った約2週間後に退院して、有料老人ホームに入居したのですが、すでに認定申請が済んでいたため、ホームに入居したその日から1割負担で入浴時の身体介助などの介護サービスを利用することができました。

ただし、一度下された認定は絶対的なものではなく、被保険者の心身状況の変化により適宜見直されます。

また、認定結果に不満がある場合は、再審査を要求することもできます。

親の介護を自己負担1割または2割(所得による)の支給限度額内でまかなえるかどうかは、親の心身状態や家族の介護力に依るため、一概にはいえません。

けれども、公的介護保険制度を支給限度額内でフルに活用した場合の自己負担額を把握していくことは、親の介護にかかる資金や労力を現実的に見積もる上で欠かせないことだと思います。


●公的介護保険制度のサービスを利用できる人は?

(1)原因を問わず要介護(要支援)状態と認定された第1号被保険者(65歳以上)
(2)末期がんなどの加齢に伴う特定疾病(16種類)が原因で、要介護(要支援)状態と認定された第2号被保険者(40歳以上65歳未満)
 ●要介護度と1カ月あたりの支給限度基準額

要支援150,030円 (5,003円)
要支援2104,730円 (10,473円)
要介護1166,920円 (16,692円)
要介護2196,160円 (19,616円)
要介護3269,310円 (26,916円)
要介護4308,060円 (30,806円)
要介護5360,650円 (36,065円)
※( )内は、自己負担額 

●住宅改修費 ・・200,000円(原則として1回限り)

●福祉用具購入費 ・・100,000円(1年)

2016年4月現在 ※支給限度基準額は、若干の地域差があります。

※自己負担額は、上記の支給限度基準額の1割または2割(所得により異なる)

※公的介護保険制度のサービスを利用するには、まず要介護認定の申請が必要です。

手続き・詳細については、お住まいのエリアの地域包括支援センターへ

(取材・文 小林 誠一)

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