40歳を過ぎたらオヤノコト

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親の暮らし方基礎講座今から知っておきたい「介護型」の有料老人ホームのこと

記事の発言・監修・ライター
坂口鈴香(Suzuka Sakaguchi)

20年ほど前に親を呼び寄せ、母を看取った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて考えるように。施設やそこで暮らす親世代、認知症、高齢の親と子どもの関係、終末期に関するブックレビューなどを執筆 してきました。これまでに訪問した親世代の施設は100カ所以上、お話を聞いた方は数えきれません。今は「オヤノコト」が自分のコトになりつつあり、自分の変化も観察しているところ。

 

昨日まで元気だった親が、突然倒れて入院、そして介護が必要に…。
そのとき慌てないためにも、事前に情報は持っておきましょう。
今回は、介護が必要になったときのための「介護型」の有料老人ホーム選びのポイントをまとめました。「介護型」でも、ホームごとのケア力ぢから
はそれぞれ。「自分の親にとって心地よい暮らし方とは?」という目線で選びたいものです。

介護サービスを受けるための 「介護型」のホーム とは

親が高齢になると身体状況の変化が顕著になってきます。特に80歳を過ぎると、5人に1人が介護の必要な状態に。親の介護に直面し、慌てて施設を探す人が多く、「こんなはずでは…」ということも。
そこで知っておきたいのが、介護サービスが受けられる施設のこと。代表的な公的施設は「特別養護老人ホーム(特養)」ですが、入居要件は「要介護3以上」、入所待機者が53万人で、数年待ちというのが実態です。

そこで、現実的な選択肢となるのが民間の「介護付き有料老人ホーム」です。いざというときに慌てないよう、今から情報収集をしておくことが大切です。
「介護型」の有料老人ホームは、介護の必要な人(要支援・要介護)が入居します。居室は、介護サービスを受けるのが主な目的なので比較的狭めのワンルームタイプです。小さ目のテーブルとイス、テレビ台、整理ダンスを置けるくらいの面積です。トイレや洗面台はついていますが、車いすで出入りがしやすいよう、扉は引き戸になっ
ています。
「介護型」のホームの特徴で、安全性、職員の目の行き届きやすさが重視されています。
入居者は介護サービスを利用しているので、「自立型」のような共用施設は少なく、食堂、デイルーム、リハビリ室などがある程度で、浴室は共用施設として要介護者向けの介助浴室が配置されています。

●介護付き有料老人ホーム(介護型)
【対象】

入居契約時の年齢が満60歳以上、要支援・要介護認定を受けている
【居室の仕様】

介護サービスを受けるのが主な目的のため、比較的狭めのバリアフリーのワンルームタイプ(13㎡以上)。※自立型と比べると、キッチン・浴室などはついていない
【共用施設】

食堂(兼デイルーム)、介助浴室など
【前払金(入居一時金)】

ゼロから数千万円
【月額費用】

14、5万~高額なものまで幅広い
【食事】

常食だけでなく嚥下(えんげ)・咀嚼レベルに合わせて、キザミ食・ペースト状などの形態に対応
———-
提供する医療ケア ※各ホームによって異なるので確認を
認知症、経管栄養(胃ろうなど)、在宅酸素、尿カテーテル、人工肛門、ターミナルなど
※間取り・設備は各ホームごとに異なりますので、ご確認を

写真:介護付有料老人ホーム「横浜エデンの園」(写真などはイメージです)

「オヤノコト」世代が気になるポイント

(1)運営主体
有料老人ホームは異業種からの参入も多くなっています。ただ、「オヤノコト」世代にとって心配なのは、経営難により倒産したり、オーナーが変わってサービスの中身が変わってしまうなど、親に余計な負担がかかるような事態になることではないでしょうか。経営規模や知名宣伝に熱心だったり、急激に施設数を増やしているような場合は、職員の確保が追いつかず、サービスの質が低下する可能性もあるので注意が必要です。

(2)毎日の暮らし
「介護型」だからといって受け身ばかりでは、心身ともに衰えてしまいます。「介護型」ホームのアクティビティは、手芸や習字、体操など機能訓練を目的としたものが中心で、入居者が楽しく、生きがいを持って暮らせるよう職員が工夫し行っています。もちろん参加を強制することはできませんが、職員が参加をやさしく促してくれるようなホームを選びたいですね。
また、ホーム内の掲示板には、イベントのお知らせ、食事のメニューなど、手作りのポスターが貼ってあります。イラストや写真を使用するなど、楽しそうに作っているホームは、入居者のために企画に力を入れているという目安になりそうです。

(3)介護体制
入居者に対する介護職員の割合は3:1が国の基準。ホームによっては「2:1」「1.5:1」と、手厚い職員配置をしているところもあります。数値はあくまで目安であり、それだけで判断はできません。見るべきポイントは職員の質と表情です。

(4)医療支援体制
施設内の看護師により日常の健康管理として朝夕の体温、血圧、脈拍などのバイタルチェック、服薬管理、健康相談が行われています。また、協力医療機関により、健康診断も受けられます。看護師が24時間常駐しているホームと、夜間は介護職員だけで、必要に応じて看護師に連絡するホームがあります。医師の診察が必要と判断された場合には、医療機関を受診することになります。そのために、ホームには「協力医療機関」があります。ホーム内に診療所を併設しているホームもありますが、多くはホームに近い総合病院や診療所などと協力しています(優先的に受診・入院ができるという訳ではありません)。

(5)リハビリ
今の機能を維持するためには、「生活リハビリ」も大切です。例えば、職員とおしゃべりしながら廊下を歩くのもリハビリになります。そのためには、ケアの職員が充足していなければ対応ができません。また、ホームによっては国家資格(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など)を有している職員が常駐しており、さらに積極的に取り組んでいるところもあります。

(6)認知症ケア
認知症専用フロアのあるホームもありますが、認知症でも気持ちよく生活できるかどうかは、介護サービスだけでなく、個々の入居者の状態に合わせて、どのように職員が接してくれているかでも決まってきます。

(7)看取り
看取り(ターミナルケア)に力を入れているホームも多くなってきました。まずは、実際にどのような体制で行っているかを確認しましょう。

〈介護付き有料老人ホーム(介護型)にかかる費用〉
例:神奈川県の「入居時要支援・要介護」の介護付き有料老人ホームの終身プランを参考に編集部が追記

費用の明細は、パンフレットとは別に渡される「重要事項説明書」や「介護サービス等の一覧表」に記載されています。前払金と月額費用などだけでなく、その他
にかかる費用も含めて試算しておくことが大切。

(1)前払金( 入居一時金)
入居時に一括で支払う“前払家賃”のこと。ゼロから数千万円と幅がある(ゼロの場合は月額支払い)
●家賃〈非課税〉 
●介護費用(特別介護金)

(2)月額費用 毎月かかるもの。ホームごとに異なる
●家賃 ※前払い金がゼロの場合(一時金払方式では、前払いなのでかからないこともある)
●管理費 
●食費(1日3食30日の場合)  
●生活費(居室の水道料・給湯料<管理費に含まれる場合もある>・電気料・電話料・日用品費・消耗品代など)

(3)そのほか 必要に応じて利用した場合、別途かかるもの
●おやつ(1食) 
●園行事・レクリエーション参加費(無料のものもある)
●買い物や外出の付添(交通費は実費) 
●訪問理美容代 
●医療関係(医療費、協力・指定医療機関以外への通院、入退院の際の付添介助など)  
●介護関係(介護保険の自己負担分<収入に応じて
1割または2割負担>、オムツなどの介護用品費)

※介護費用(特別介護金)とは、国が定めた介護体制(3:1 ⇒要介護者3 人に対して1 人の看護・介護職員を配置)より、さらに手厚い介護体制(2:1 または、1.5:1 など)を維持するための費用のこと

 

●ホーム選び。見学は「体感」する場
ホームとの相性は、自分の目と感覚で確かめるのが一番。見学の際、ポイントとなるキーワードが、5つの「気」。「雰囲気」「空気」「活気」「気遣い」そして「気持ちよく生活できそうか」です。「空気」とは、臭い。臭いがあっては生活環境として適していないのは言うまでもありません。

見学や体験入居をして、暮らし方に求める条件の優先順位を絞り込んでいくことが大切
(写真は「オヤノコト」見学会の様子、協力:介護付有料老人ホーム「舞浜倶楽部」)

ホームに入ったとき、見学しているときに感じる「雰囲気」も大切。「活気」は、職員が生き生きと仕事をしているか。「気遣い」は、来訪者や入居者に対して明るく挨拶ができているか。そして時間があれば親に1週間ほど体験入居をしてもらいましょう。食事もぜひ食べてみてください。これらを総合的に見て「気持ちよく生活できそうか」を判断しましょう。

●入居がゴールではない
入居後、子世代がホームに足を運ぶことも大切。きちんと運営されているホームなら、家族の参加や協力を求める機会があるはず。外出や旅行となると、ホームだけでは
限界があり、家族の支援は不可欠です。風通しのいいホームは良いホームの証。面会時間は○時から○時までなどと面会の制限を設けないホームを選びたいものです。

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