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【お墓の引越しと新しいお墓の選び方セミナー開催レポート】「お墓まで遠くて…」「見守る人がいない」わが家のお墓の“未来”、考えてみませんか? 

記事の発言・監修・ライター
大野ルミコ(Rumiko Ono)

雑誌、Web広告などを中心に幅広く活動中。現在、80代の母親と同居するリアル「オヤノコト」世代。聴こえの衰えや唐突に前後する会話に母親の“年齢”を実感しつつも「まだまだ元気そうだし…」と、趣味である野球観戦やライブ遠征に備え、食べるための「歯」・元気で過ごすための「足」の健康維持に励む日々。

5月18日、オヤノコト.ステーションにおいて、29年、お墓のプロとしてお客様のお悩みに応え続けてきた「オヤノコト」パートナー相談員の塩崎唯一氏(須藤石材株式会社)による「お墓の引越しと新しいお墓の選び方」セミナーを開催しました。

お墓の引越し、改葬、墓じまい。実はすべて同じこと

「お墓の引越し」「改葬」「墓じまい」と、いろいろな言葉が出ていますが、すべて同じ意味合いだそうです。ご遺骨を他の墓所に移し、現在の墓所を更地に戻すお墓の引越し(改葬・墓じまい)は、「お墓が現在の住まいから遠くて通えない」「子どももいないし、自分の後、お墓を守れる人がいない」といったさまざまな理由から、近年、ニーズが急上昇。塩崎さんのもとにも多くの相談や問い合わせが寄せられているといいます。

実際、当日、オヤノコト.ステーションに集まった参加者のみなさんも、「先祖から続くお墓の『墓じまい』を考えている」という方がほとんど。熱心にメモを取りながら、そして質疑応答を繰り返しながら塩崎さんの話に耳を傾けていたのが印象的でした。

お墓の引越しにはさまざまな手続きが欠かせない!

お墓の引越しをしたい……となった時、実際にどんな順番でどんな手続きをすればよいのか、というところまでご存じの方は少ないのではないでしょうか。そこで塩崎さんはまずその「手順」について解説。

お墓の引越しをする場合は・・・

・今、お墓がある寺院や霊園への打診、墓所の「返還」手続きを行う

・改葬先となる新しい墓地から「受入証明書」を入手する

・現在の墓地がある市区町村役場から「改葬許可申請書」を入手する

・入手した「改葬許可申請書」に必要事項を記入したうえで、現在の墓地管理者から「埋蔵証明」を受ける

・埋蔵証明を受けた改葬許可申請書、受入証明書を添えて改葬許可の申請をし、「改葬許可証」を交付してもらう

と、簡単に説明しただけでも、これだけの手続きが必要となるのだとか。また、その間、親戚や、今墓地がある寺院や霊園との話し合い(これが本当に重要!)など、さまざまな調整が必要になる場合も少なくありません。つまりお墓の引越しとは「お墓を移そうといってすぐにできるものではなく、しっかりとした準備と手続きをして初めて実行できるもの」なのです。セミナーでは、塩崎さんの経験の中で実際に起こったトラブルなども事例に挙げながら、改葬手続き時の注意点がわかりやすく解説され、参加者も「思ったよりも大変かも…」「そんな手続きも必要なの?」と驚きの声が上がっていました。

お墓の引越しは改葬先が決まらないと何も始まらない!

また、セミナーでは塩崎さんの「お墓の引越しは改葬先となる新しい墓地を決めないと、なんの手続きもできません」という説明に、驚きの表情を見せた参加者も。

お墓の引越しのための手続きは「改葬先となる新しい墓地を決めて、受入証明書を入手する」ことがスタートになります。そのため、まずは遺骨を受け取って、合祀にするか、樹木葬などを利用するかを決める……というわけにはいきません。また、近年人気の「海洋散骨」については、明確な埋葬先が提示できないため、受入証明書の発行が難しく、自治体によっては改葬許可申請を受け付けていないところもあるのだとか。

海洋散骨を希望しても「改葬許可申請」が受け付けてもらえない可能性も…

改葬を考えるのであれば、まずはご遺骨をどのような場所に、どのように埋葬するのか、親戚や家族でしっかりと考えておきましょう。そして、せっかく決めたお墓の引越しが「できない」ということにならないよう、プロのアドバイスも取り入れながら、準備を進めると安心ですね。

樹木葬や海洋散骨を選択すれば、改葬にはお金があまりかからない…?

また、塩崎さんは気になるお墓の引越しにかかる「お金」についても説明。「あくまでも参考までに」と、一般的なお墓の引越しにかかる費用を提示してくれたのですが……正直「想像以上!」と参加者も全員ビックリ。

お墓の引越しには、新たなお墓を用意する・新たに埋葬を行う費用ばかりに目を向けがちですが、お墓から遺骨を取り出すための出骨作業やお寺への謝礼、今あるお墓を更地にして寺院や霊園に返すための解体工事などの費用も必要となります。ちなみに解体工事の相場は目安として1㎡あたり15万円くらい。広々とした区画にいくつもの墓石が置かれている……といった場合は、さらに高額になる可能性があります。

樹木葬や海洋散骨は確かに「新たなお墓を建てる」よりは価格を抑えることができますが、今あるお墓の解体工事などにかかる費用も考えると、決して「安い!」「手軽にできる!」という金額ではありません。後になって「こんなにかかるの?」とならないよう、予算の面でもしっかりと計画を立てておくようにしましょう。

引越し先のお墓を決める際に「大切にしたいこと」とは?

「かつてはお墓の引越しとは遠方にある先祖代々のお墓を、住まいの近くの霊園に移すといった、一般墓から一般墓への改葬がほとんどでした。でも今は、一般墓だけでなく、樹木葬や納骨堂、合祀墓、そして散骨と選択肢が増え、本当に自分たちに合ったお墓はどんなタイプなのかを考えることが大切です」と話す塩崎さん。

そのうえで「自分たちにふさわしいお墓」を選ぶために考えるべき以下の3つのポイントについても解説してくださいました。

  1. 新たなお墓に自分たちも入りたいと考えているのか
  2. お墓を継ぐお子さんはいるか。
  3. 合同での供養ではなく「個別のお墓」で手を合わせたいと考えているか

親の立場になると、とかく「子どもに負担をかけたくない」という思いが先に立ってしまいますが、お墓はただ単に「骨つぼを納める場所」ではありません。自分たちだけでなく、家族(子ども)や親戚の声にも耳を傾け、選択しないと「こんなはずじゃなかったのに・・・」と後悔につながる可能性が高いのだとか。

お墓は子どもや孫の代にまで「継がれていく」もの

塩崎さんは参加者に「墓じまいは『=全くお墓を持たないこと』ではありません。また、お墓はただ骨つぼを納める場所でもありません。最近は効率や負担軽減を優先する方も多いですが、家族を想う気持ちにふさわしい場所かどうかをしっかりと考え、選ぶようにしてください」と呼びかけ、セミナーを締めくくりました。

「知らないことが多いということに気づいた」という声が続出

セミナー終了後、参加者からは「知らないことが多かったけれど、少しでも不安が解消できてよかった」といった声が寄せられました。お墓の建立や納骨に関わるというのは、人生において何十回もあることではないため、知識も経験も少なく、しかも「誰に聞けばいいのかわからない」という方が多いのだと、塩崎さんも、私たち「オヤノコト」スタッフも改めて実感する機会となりました。

また、最近は「先祖や親のお墓を今後、どう維持するか」ということももちろんですが、「将来、自分がどのお墓に入るのか、どう埋葬してもらうのかについて考えたい」という方も増えています。今は一般葬の他にも樹木葬や海洋散骨、合祀葬などさまざまなスタイルがありますが、そもそもそれぞれがどんな埋葬法で、費用はどのくらいかかるのか……知る機会もなくイメージがわかないというのが正直なところではないでしょうか。

そこで次回のセミナーでは「私にぴったりのお墓、どうやって選ぶ ~樹木葬?納骨堂?一般墓?迷った時に聞く話」と題し、それぞれのお墓のメリット・デメリットについてもわかりやすく解説する予定です。どうぞご期待ください!

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