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親子で共倒れしないために・・・親や自分のお財布事情の見える化を

記事の発言・監修・ライター
「オヤノコト」パートナー相談員 ファイナンシャル・プランナー 村井英一(むらい えいいち)

家族の生活設計の相談を多く受けている。介護の費用について詳しく、老後の生活資金についてのシミュレーション分析を得意としている。CFP、FP技能士1級

「介護の費用は本人の貯蓄から」が原則と言われています。
もちろん、子が親の介護の費用を出すことはあります。
しかしそれが続くと、子の貯蓄が減ってしまう懸念があります。
その時は余裕があり、親の介護費用を捻出できたとしても、たびたび続くと子が十分に貯蓄を積み立てることができません。その結果、子が年をとり、介護が必要になった際に資金不足となりかねません。
再び自分の子に頼ってしまっては、介護費用の連鎖になります。

子にとって親の老後は心配ですが、資金を出す以外にも、たびたび様子を見に行く、話し相手になる、たまには外食や遠出に連れ出しながら親の老後の希望を聞き出す、より良い暮らしのための情報を集めるなど、いろいろと貢献できることはあります。
そういった面で親をサポートするのも、親子が共倒れしないひとつの方法です。

親の貯蓄、年金収入などを把握しておく

画像はイメージです

明治安田総合研究所の調査によると、50代後半で「親の預貯金を把握している人」は男性が37.6%、女性が40.1%と半数以下の方が親の貯蓄については把握していないというデータが出ています(親の財産管理と金融リテラシーに関するシニア世代の意識と実態」2019年)。元気なうちはよいのですが、高齢になると、“万が一”は突然起こります。

前回お知らせしましたように、介護の平均期間は約5年1カ月、その期間、どのように過ごすか、サポートはどうするか、在宅か施設か・・・など、お金にまつわる判断をつけなければならないものは山積みとなります。

さて、その介護の費用を親の貯蓄で賄うとなると、親の貯蓄がどれくらいなのか(保険の加入状況、不動産や株の有無など)を、子が知っておくことは必要になります。親の貯蓄があまり多くない場合は、できるだけ自宅で暮らしていけるように工夫する、公的な介護施設を探す、など親の資金の範囲の中でうまくやり繰りすることを考えたいものです。

今、どれだけ使ってもよいのかという目先のことだけでなく、数年続いた場合の支出などは資金シミュレーションを作成すると確認することができます。また、数年の間には、親の身体状態はもちろん、ご自身の経済状態なども変化しますので、シミュレーションも状況に合わせて常に見直しが必要です。

貯蓄に余裕があるのならば、その資金を有効活用して、より良い介護体制を整えるのもひとつです。
施設によって違いはありますが、やはり基本的に料金が高い施設の方が、充実したサポートを受けられる傾向はあります。ご本人やご夫婦で築いてきた財産なのですから、人生の終わりに豊かな老後を過ごしてもらいたいものです。中には、実は十分な貯蓄があるにもかかわらず、先々を心配して過度に節約をしてしまう高齢者も少なくありません。認知症まで至らずとも、高齢になると大局的な判断が難しくなる傾向があります。
数千万円もの資産を持っているにもかかわらず、「お金がない」と節約に励む高齢者もいます。
その人が亡くなってから遺族が財産額を知ることになりますが、亡くなってからでは取り返しがつきません。

そのようなことにならないためにも、高齢の親がどのくらい財産を保有しているかを、把握しておきたいものです。親の貯蓄額を子が把握していれば、介護の費用を適切に使うことができます。老人ホームなどの高齢者施設に入居する場合も、どれくらいのランクの施設に入居できるのかを判断することができます。親の財産額を把握しておくことで、過不足のない適切な介護を受けてもらうことができます。

ただ、この「親の財産を把握する」のは簡単ではありません。
親子で会っても、面と向かってはなかなか聞きにくいので、先延ばしにしてしまいがち。財産を狙っていると疑心暗鬼になったり、親が怒って話ができない状態になってしまうことも。

ご相談にきた子世代の方は、「友だちの話だけど、突然親が倒れてしまい入院・介護・施設の費用を自分で用意してたいへんな思いをした」というご友人の話を例にして、親を説得したそうです。なかには、家族でエンデイングノートを書き出すことで共有したという方もいます。

親にとって「より良い老後のために」と説明して、親のために貯蓄額の把握が必要であることをわかってもらうことが大切です。
離れて暮らしている場合には、帰省の際などにゆっくり時間をかけて話し合うのもひとつです。

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