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人口の高齢化に比例して、今、親世代のドライバーによる交通事故が増えています。
また、クルマへの乗り降りが大変だから―と、家族といっしょのドライブを敬遠してしまう親世代もいるのだとか。その要因として考えられている親世代のさまざまな「身体の変化」について、溝端光雄先生にお話を伺いました。
ちょっとした買い物や通院など、今や「生活の足」として欠かせない存在となっているクルマ。そのため「高齢になっても運転を続けるドライバーも多く、それに伴って親世代のドライバーによる事故が増加し続けている」と溝端先生は言います。しかし、親世代のドライバーは運転に慎重な人が多いと言われ、スピード超過や飲酒運転による事故はほとんど見られません。それなのに出会いがしらや交差点での衝突事故などが増えているのはなぜなのでしょうか。
溝端先生は、その大きな要因のひとつとして「自分の身体機能の衰えや不調に気づいていない、もしくは気づいていても?大したことはない“と放置してしまう人が多い」ことをあげています。「例えば、膝が痛いと感じても、自己判断で?大丈夫“と放置してしまう。しかし、高齢者に多い『変形性膝関節症』は、安静時にはあまり痛みを感じません。ところが運転中に?危ない!“という場面に遭遇し、ブレーキを踏もうとした瞬間に痛みが走ることがあるのです。それによってブレーキを踏むのが遅れるとか、アクセルとブレーキを踏み間違えたといった事例も多いんですよ」。
また、手足が思うように動かない、視野が狭くなるといった脳梗塞による症状も、同様に?ある時、突然“発作的に起こり、「数分後には何事もなかったように回復することもある」のだとか。年齢による判断力・注意力低下による事故が多いと思われがちなシニアドライバーですが、実はその背景には、こうした身体の不調が潜んでいることも少なくないのです。
しかし、こうした身体の不調は、決して前触れもなく発症するものではないと溝端先生は言います。「手足が思うように動かないといった大きな症状が現れるまでには、その前兆がある場合が多いようです。もし、足元のふらつきや耳鳴り、めまい、しびれといった症状を訴えるといったことがあれば、早急に病院で診察を受けるように奨めましょう。小さな体調の変化を見逃さないようにしたいですね」。
年齢による身体機能の衰えは徐々に現れるため、自分の身体の変化に気づかない人も多いもの。溝端先生は「親世代の普段の生活や、運転の様子を確認して、安全運転のためのアドバイスをしてあげるのも子どもの役目」だと言います。「でも、いくら心配だからといって、頭ごなしに運転を否定しないこと。批判的な言葉を使うと、意固地になって、せっかくの忠告にも耳を貸さなくなってしまいます。親を気遣う気持ちを伝えるように心掛けましょう」。
□クルマの運転はストレスが多くて疲れると感じる
□対向車のヘッドライトの光にイライラする
□ハンドルを切る、ペダルを踏む、バック時に振り返る、駐車などが困難
□過去1年間に自身の過失で事故を起こした、または運転時に警官に呼び止められた
□クルマの運転中、過度に慎重になる
□ときどきミラーや信号を見忘れたり、対向車線の確認を怠る
□運転中に道に迷う
□友人や家族が運転を心配したり、同乗を避けている
□最近、運転中にヒヤリとする場面が増えている
□他のクルマに気づかない。また、交通標識を見落としたり、反応できなかったりする
□渋滞時、交通量の多い交差点での左折時に不安がある
□他のドライバーの速度が速いと感じる
こうした親世代の身体の変化は、運転だけでなく、クルマに「乗り降りする」こと自体にも大きな影響を与えます。実は乗り降りする時、私たちの膝や腰には大きな負担がかかります。特にせまい駐車場でドアを充分に開くことができない時など、身体を不自然にひねって乗り降りしなければならず、苦労を感じたことはないでしょうか? もしもそれが足腰の弱くなった親世代であったら――なおのこと不便を感じるはずです。
溝端先生は「そんな時は、親世代にやさしいクルマへの買い替えを検討するのもひとつの方法」だと言います。「高齢の親世代と一緒に乗るクルマであれば、狭いスペースでもドアが大きく開く、スライドドアがオススメ。楽な姿勢で乗り降りできるので、足腰への負担も軽くなります。また、乗り口が低く設計されているクルマの方が、親も子もお互いに安心できるのではないでしょうか」。
年齢を重ねると、どんなに健康な人でも身体機能の衰えや不調が起こりやすくなります。しかし、こうした不安に負けず、ドライブを楽しむためにも、親世代が安心して運転・乗り降りできる「高齢者にやさしいクルマ」を選びたいもの。「今は、危険を察知した時に自動でブレーキがかかるセンサーや、バックモニターといった安全・安心に配慮した機能も開発されています。クルマの買い替えを検討する際に、こうした機能もチェックしてみるのもいいですね」。
ドライブ中、もしもご両親にこんな様子が見られたら、乗り降りにちょっと不満を感じている可能性が。そんな時は「高齢者にもやさしいクルマ」を考えてみませんか?
□ドアを大きく開けないと乗り降りできない
□乗り口でつまずく、または転ぶ
□クルマの上部に頭をぶつける
□隣のクルマや駐車場の壁にドアをぶつけてしまう
□せまい駐車場での乗り降りを嫌がる
□ドアを閉める力が弱く半ドアになりがち
□手すりがないと立ち上がれない
お話をお聞きしたのは
自由学園最高学部 講師
生涯発達・活老アドバイザー
溝端光雄先生
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