40歳を過ぎたらオヤノコト

公開日:

今注目されている「家族信託」とは?

記事の発言・監修・ライター
尚宏 大澤
「オヤノコト.マガジン」編集長大澤尚宏氏

バリアフリー・ライフを応援する生活情報誌「WE’LL(ウィル)」創刊。その後、高齢者社会にスポットを当てた「オヤノコト」をキーワードとしたフリーペーパー、メディアサイトの運営を行っている。

皆さんの中には、親と会話するなかで、親が物忘れをしていたり同じ会話を何度もしたりするようになったことに気づいた人もいるだろう。
こんな時、子は親を認知症ではないか、と疑うことが多い。
内閣府によると、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されているが、65歳未満でも若年性認知症になる場合がある。その場合は高齢者より進行が早く、症状も重い傾向がある。
もしも親が認知症になり、判断能力がなくなったら、口座が凍結され、不動産の名義変更や売却ができなくなる。家族は預金を引き出せず、当面の生活費も捻出できない。親を老人ホームに入居させるため、手持ちの不動産を売却することもできないなど、さまざまな問題が発生する。
そこで、親が元気なうちからの対策として「家族信託」が注目されている。家族信託とは、財産の所有者が信頼している家族に自分の財産の管理・処分を任せる方法であり、いわゆる財産管理の一手段だ。
例えば、親が賃貸不動産を所有・管理している場合、親が認知症になった時を踏まえて「子に(1)賃貸不動産の管理(2)認知症になった時に賃貸不動産を売却し、売却金を老人ホームの入居費用として利用することを希望している」という内容で家族信託契約を結んでおけば、賃貸不動産の管理方法を誤る心配がない。
こうした家族信託は、親が判断能力のあるうちに子と契約を取り交わす必要がある。契約を取り交わすと、不動産の場合は謄本に家族信託契約が交わされている旨が記載される。 家族信託のほかにも、贈与と成年後見人制度という方法がある。
贈与は人から人へ財産を譲る契約だが、贈与税がかかってくるうえに贈与税申告を行わなければならない。
成年後見人制度は、親に判断能力がなくなった場合に利用可能な制度だが、
(1)親のお金は親のためにしか使えず、家族が自由に使えるわけではない
(2)後見人への報酬を月々支払わなければならない
(3)後見人と相性が悪いからといって、制度の利用をやめたいと思っても、親の判断能力が復活しないかぎり、利用をやめることはできない。
親にはお金の話を切り出しづらいという人は多いが、高齢になると、いつ何が起きるか予想できない。今のうちからしっかり準備をしておいたほうが親や自分のためになるだろう。このような悩みが少しでも解決できるのが「オヤノコト」相談室だ。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。

オヤノコトネット